家族移住から始まった農家人生。自分も、果物も、素材が一番活きるかたちで

大牟田駅西口を出て横断歩道を渡った先、温かみのある木造の店舗。

駅前の一角にある農家直営ジェラート専門店「gelateria カラヘ(karae)」

営業時間は14時から21時まで。

仕事帰りのお客さんの声に応えた時間設定で、夜の駅前に温かなあかりが灯る。

その優しい光に誘われるように、多くの人がカラヘにむかう。

知らぬが仏」で踏み出した農家人生の始まり。

カラヘのオーナーである長 真弓(ちょう まゆみ)さんは、夫婦で大牟田を拠点に「長果樹園」を営んでいる。

もともとご主人の実家が、大牟田で農家をされていた。

結婚を機に、ご主人についてくるかたちで大牟田へ移住してきたそう。

大分県で生まれ育ち、大学時代には中国への留学を経験、その後鹿児島、静岡と各地を転々としてきた長さん。

多様な場所での生活を重ねてきたことで、大牟田への移住にも抵抗がなかった。

「大牟田に来ることはもちろん、農業を始めることも全くためらいがなかったですね。知らぬが仏、って言うでしょ。苦労を知らないから、あまり考えずに来れたんだと思います」

農家が始めた素材を活かすジェラート屋

「梨を作っているんですけど、1年のなかでお客さんの前に立って売れる時期は、たった2週間しかないんですよ」

1年を費やして育てた果物は、この2週間で収穫から販売までが終わってしまうそう。

「もっと果物を活かして、年中『長果樹園です!』って美味しさを届けられるものがないかなぁって考えてたんです」

当初は自身の好物であるソフトクリームを商品にする構想をしていたが、たまたま小型のジェラートマシーンを使える機会があった。

「採れたてのぶどうで試作をしたんですけど、これが本当に美味しくて!素材の味がこれだけ活きるなら、ジェラートで開業しようって決めました」

今では、長果樹園のフルーツはもちろん、大牟田市に本社を置くオーム乳業の牛乳と生クリームを使った「おおむたみるく」など、地域の食材を活かしたジェラートを提供している。

<夏に大人気の「ももジェラート」は近隣の農園の桃を使用>

定番の抹茶やチョコレートに負けないくらい、フルーツのソルベや「おおむたみるく」が人気なんだそう。

お店と子育ての両立を支えるまちの存在

そんな長さん、実は三児の母の顔をもつ。

「大牟田って、コンパクトにまとまっていて動きやすいんですよ」

子どもが外に出たいと言えば、遊具も砂場もある諏訪公園に連れて行く。

子どもが遊び疲れたら、諏訪公園のすぐ側にあるイオンへ連れて行く。

道が混まないため、車生活でも移動に負荷がかからない。

そんな積み重ねで、子育てとお店の両立が成り立ってきたそう。

「自分で店をやりながら、子ども3人を育てるっていうのは、都会だったらできなかったと思います。もうね、いっぱいいっぱい(笑)」

これからも自分を出して、自分が活きる方向へ

大牟田に移住してきたばかりの頃は、畑と家の往復で外とのつながりがないことに苦しんだ時期もあったそう。

子育てを通したつながりや、お店の開業をきっかけにそんな悩みはなくなっていった。

「同じ場所でじっとしてるのが合わないんだと思います(笑)だから、外や店に出て、人と出会ってを繰り返す。そうすると、まちの中で輪が広がっていくんですよ。そういう人との出会いによって、自分がチャージされていく感覚があるんです」

今は、子育てに、農家に、ジェラート屋に、と活発に動く長さん。

これまで国内外を渡り歩いてきたからこそ、今後は地域と地域をつなぐ存在になることを目指している。

そのため、カラヘは大牟田にとどまらず、全国や世界にも発信をしていきたいという。

<台湾の百貨店で行われたPOPUPの様子>

「やっぱり、自分という個性をしっかり外へ出していく。周りと馴染ませながらも、自分を主張していくことで、自分が必要とされている場所に力を発揮していける、そう思ってるんです」

自分自身を主張することで、自然と自分が活きる方向へ進んでいけるのかもしれない。

これからも多くの出会いを重ね、加速していく長さんの今後が楽しみだ。

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