鳥取駅から北へ智頭街道を歩くこと10分。袋川を渡ってすぐに見えたのは、たくさんの本が並ぶ私設図書カフェ。その名も「トりんく まんまる」。
本に囲まれた空間で、ドリンクを片手にくつろぎ、お土産に大人気のパン「ココスキーパン」も購入できる。今後は、食事も提供する予定。

なんだか気になる要素が盛りだくさんのこのカフェの店主、「丸さん」こと丸山さんにお話を聞いていく。

東京で34年営んだ、国籍のない飲食店を鳥取へ
出身は東京都中野区。10年ほど前まで中野区で「小さな無国籍料理店 カルマ」という飲食店を長年営んできた。
「中野生まれ中野育ちで、中野が東京の中心だと思い込んでいたくらいです。違うけど(笑)」
多くのお客さんに愛された東京都中野区「小さな無国籍料理店 カルマ」
そんな丸さんがなぜ鳥取に場所を移したのか。
東日本大震災を機に「ここじゃなくても良いのではないか」と思うようになったそう。
全国各地の候補地を周り、次なる拠点を探していた頃、鳥取に店を構えていたカルマの元スタッフの方が、丸さんを鳥取のイベントに招待。
「誰かが指揮をとって街の雰囲気をつくるのではなく、普段はそれぞれの活動をしている面々が、イベントがあるとパッと集まり、みんなで協力してつくる。『おー!丸さん』なんて言って、その輪の中にすんなり受け入れてくれる。その距離感がいいなと思いましたね」
鳥取の街のつながり方が丸さんにマッチした。
定番人気の中野オムライス、ふわふわの卵とピリッと辛いソース、添え物の豆腐ちくわもナンプラーが香る
その時その場で生まれるものが、やっぱりおもしろい
学生時代に雇われマスターとして働いていたロック喫茶では、様々な嗜好の音楽好きが集まり、レコードを流す丸さんに、いろんな要望が飛び交った。ジャンルの違う音楽が次々と流れる。その違いが混ざり合う空間が面白いと感じた。
その後は保育士として働き始める。その時出会った同僚の保育士さんにも、大きく影響受けたという。その保育士さんは、日々決められたことをやるのではなく、来た子どもたちのその日の状態で何をするか決める。いろんなバックグラウンドや性格の子どもたちが集まって、その場で何をするのか決めていくのがやはり面白いと感じた。
「いろんな人が集まると、何か起こってそこで違うものが生まれるというのを、今でも楽しんでいます」
無国籍料理も、そんな丸さんだからこそ生まれた。その日その場にある食材で、その時のお客さんに合わせて作っていく。レシピはあるけど、それぞれのスタッフにアレンジを委ねる。
料理だけではない。カルマの店内の作りは、あえて他の席の人にも干渉しやすい配置にしているという。
自然と初めて会った人とでも会話が生まれてしまうような空間だ。丸さんとお客さんだけではなく、お客さん同士にも生まれる空間を作り続けてきた。
そんな丸さんが、また鳥取で新たな挑戦をする。
にぎわうtottoriカルマ
まだまだ続く丸さんの挑戦
残念ながら、戎町にあるtottoriカルマは2025年末に店を閉めた。しかし、「トりんく まんまる」に形を変えて、丸さんの挑戦は続いていく。
「他の人の話って面白いじゃない?」
「本やイベント出店、そういうもので人とつながっていくと、知らないこと知れたりして。それが楽しくて飲食店をやっています」

インタビューを通して、偶然や違いが混ざり合う今この瞬間を楽しむことが、丸さんから湧き出るエネルギーの根源だと感じた。「トりんく まんまる」も今後は食事の提供もしていくなど、まだまだこれから色々な形で変化していくという。
75歳の丸さんのこれからの挑戦に、目が離せない。
知らない土地に飛び込んでも、まちにこんな場所があったら安心だ。ありのままの自分で飛び込んでも、その違いを楽しんでくれる人が集まっている。気づいたら、初めて会ったばかりの人とたわいのない話をしていたりする。
鳥取のまちなかで、今日も丸さんのつながりの輪が広がっていく。
多くのお客さんに愛された東京都中野区「小さな無国籍料理店 カルマ」
定番人気の中野オムライス、ふわふわの卵とピリッと辛いソース、添え物の豆腐ちくわもナンプラーが香る
にぎわうtottoriカルマ