3月のある日。
静岡県磐田市内、平日昼下がりは週末に比べると少し落ち着きのある、ショッピングモール。
磐田市イメージキャラクターのしっぺいが大きく描かれた、ひときわ目を引く場所『磐田市情報館』を訪れた。

鮮やかな黄色の制服に身を包み笑顔で迎えてくれた泉桜子さん。
生まれは神奈川県、小学生の頃、静岡県に引っ越してきた。
現在のお仕事に就いたきっかけはコロナ禍だった。
「それまでの仕事がコロナ禍で休業になってしまって。その頃磐田市に引っ越してきていたので、近場で観光スポットとかないかな?って調べたら気になるものを見つけて」
それが、『磐田市竜洋昆虫自然観察公園』で開催されていた『ゴキブリ展』だった。
「もともと動植物園とか、博物館とか好きなので。全国色々訪れていたのですが、そんな私でも『ゴキブリ展』って何!?って二度見しました(笑)」
たしかにすごくインパクトだ。
「ゴキブリに良い印象ないと思うんです。見かけたら不快に感じる生き物。そのイメージが覆されるような、可愛い展示をしていたり、一見ゴキブリってわからないような種類が展示してあったり。いろんな工夫がされた空間で。ゴキブリって良いかもしれないってちょっと思っちゃいました(笑)」

インパクトの強い企画――。
実は恒例企画だったと後々知ることになる。
「市の施設で毎年やっているってことは、市も認めているってことじゃないですか?それにもびっくりして、なんなんだこの市は!?と思って興味をもちました」
そんなきっかけから感じた興味を、泉さんはさらに深めていく。
「他にもおもしろい施設があるのではと思って、調べていったら香りに特化している『香りの博物館』や吹きガラス体験ができる『磐田市新造形創造館』があったりして。魅力にどんどんハマっていきました」
そうしてたまたま出会った、『磐田市情報館』のコンシェルジュの募集。
「運命を感じて、応募しました」
小学生の頃から静岡県内に住んでいて、磐田市はもちろん知っていた泉さん。
「これまではスポーツのまちというイメージで。わざわざ磐田に遊びに行ったりすることもなかったですね。でも深掘りしていくと、自然、食べ物、体験型とか。スポーツ以外もあるんだって、イメージが覆って。このいろんな魅力を多くの人へ届けたいなって思って、コンシェルジュになりました」
こうして偶然が重なって、泉さんの今があるのかもしれない。
普段はショッピングモール内にある『磐田市情報館』とJR磐田駅北口の近くにある『磐田市観光案内所』の2ヶ所で勤務している。

「『磐田市情報館』は近隣の方が多く訪れます。『磐田市観光案内所』は観光で来た方が多いですね。施設の役割は違うのですが、どちらも磐田を伝えるという意味では共通しています」
「私もそうだったのですが、どうしても市の施設となると入りづらい、堅いみたいなマイナスイメージもたれている人が多くて。だからこそ、市役所ができないことを情報館でやりたい。明るく入りやすく、ここに来れば楽しい情報がもらえるって思ってもらえるような場所にできるように。掲示物の色味を明るくしたり、楽しい情報を集めることを意識しています」
今回訪れた『磐田市情報館』は、手作りの温かい雰囲気のポップが溢れていた。

その中でも一番人気のコーナーで、お子さんが走って観にくる展示があるという。それが、泉さんが磐田市に興味を持ったきっかけともなった『磐田市竜洋昆虫自然観察公園』からお借りして展示をしているというカエルやゴキブリの展示。泉さんの目指す、入りやすい空間づくりの一部になっている。
案内や掲示物の作成だけではなく、イベントの企画などもコンシェルジュが協力しておこなっているという。
「イベントも入りやすさを意識しています。今年は磐田市市制20周年なので、たくさん計画中です」
そう語る表情からは、ワクワクしながら仕事を楽しんでいることが伝わってくる。
「『磐田市観光案内所』は磐田市に観光に来た人が、最初に訪れる場所なことが多いです。道案内や観光スポットを案内すると、帰りにお礼や感想を伝えにもう一度寄ってくださる方も多くて。磐田の印象が良かったからって1年後ぐらいにもう一度訪れてくれる人もいます。そういう人と出会えると嬉しくて。やりがい感じますね」
日々の業務にやりがいを感じながらも、それだけにとどまらないのはなぜだろう。
「もともと何かをつくることが好きで。いろんなアイデアが思い浮かぶタイプなんです。それを活かせる環境のなかでお仕事させてもらっています。やりたいって言ったときにいいよって言ってくれる場所って少ないと思うんですけど、磐田市ってチャレンジ精神溢れている人が多くて、バックアップをしてくれる人も多いので、やりたいことを実現しやすいです。その働きやすさも原動力になっているかなと思います」
持ち前の明るさと磐田市の「チャレンジ精神」が、今の泉さんの笑顔をつくっているのかもしれない。
「新しいことにどんどん挑戦していって、ゴールに向かって猪突猛進に進んでいるときに自分らしいなって感じるんです。なにかをはじめるとき、年齢を理由にして辞めちゃうこともあると思うんですけど、年齢は関係ないんじゃないかなと思っていて、いつでも新しいことをやって、自分の思い描いているところへ走り続けていたいです」
アイデアだけじゃない、実現するまでの過程が泉さんにとっての『いいわたし』。
「『磐田市情報館』を遊園地みたいな場所にしたいです。明るくて、楽しくて、行く前からワクワクするような。コンシェルジュ自体が楽しく働けて、それがお客様に伝染するような。そんなワクワクを詰め込みたいですね」

春の暖かさを感じられるようになってきた。
4月は新たなことがスタートする季節。
年齢を重ねるにつれて、頭で考えすぎて、新しいことへの一歩が億劫になりがち。
でも、泉さんのキラキラした目で語る姿を見ていると、そんな気持ちが吹き飛んでいくようだ。
泉さんの取材を終えて、ふと思った。
心地よい春の日差しを浴びながら、自分の心に素直に従って、思いのままに動いてみようかな。
今日も前に進み続けたい。
