移住して叶えた海のそばの暮らし。海が望める複合アウトドア施設が持つもう一つの顔

2024年7月、鳥取砂丘から車で5分ほどの場所に、海岸をのんびりと眺められるアウトドア複合施設が誕生した。

手ぶらキャンプ、バレルサウナ、Cafe Bar、BBQ、SUPなど、海を満喫できる施設。2025年度グッドデザイン賞を受賞したこの施設を作り上げたのは、東京出身の上田博隆さん。保険会社で全国転勤を経験した後、55歳で早期退職を決意し、鳥取に移住した。

「ずっと海のそばに住みたいと思っていました」

上田さんのその想いが、IWADO BASEという形になるまでの物語を聞いた。

東京都府中市で育った上田さんは、大学進学を機に関西へ。卒業後は保険会社に就職し、全国を転々とする転勤生活が始まる。名古屋市や仙台市などの転勤を経て、鳥取へ転勤してきた。

「初めて来た時は、鳥取駅の改札が自動改札じゃなくて、驚いたのを覚えています笑」

海のそばで暮らす夢

そんな上田さんには、ずっと温めてきた夢があった。

「もともとマリンスポーツが好きで、大学の時からスキューバダイビングをずっとやっていました。仙台に転勤した時には船を買って、ジェットスキーをしたり。いつか海のそばで暮らしたいというのはずっと思っていたんです」

 

海のそばで、自由に海を楽しめる暮らしをどこかでずっと思い描いてきた上田さん。

「車で海の近くを走っている時に見える海がすごくきれいで。鳥取は観光地じゃなくても、何気ない日常の中に綺麗な景色があるいい場所だと思いました」

 

鳥取市に転勤し、3年ほど過ごした頃、上田さんに運命的タイミングが訪れた。

「ちょうど役職定年の年齢になり、この先どうしようかと考えていました。その時に、たまたまこの土地が空いていると聞いて」

 

海のそばでの暮らしを思い描いてきた上田さんにとっては、岩戸海岸の目の前にあるこの場所はうってつけの場所だ。

様々な偶然が重なり、上田さんは早期退職を決意した。

「55歳で辞めたとして、あと10年、15年は何かやって暮らしていきたい。今さら就職といっても、年齢的になかなか雇ってくれるところもないし。だったら自分でやろう、と」

 

つくったのは、
ぼーっと海を眺められる場所

「海の家的な何かができないかなと思っていました。凝った料理を出すというわけでもなく、気軽に楽しんでもらって、ぼーっとしながら過ごせる場所」

 

元々キャンプやダイビングなど、アウトドア好きの上田さんが選んだのは、海の家のように気軽に立ち寄れて、ぼんやり過ごせる場所づくり。大学時代の先輩の紹介で出会った設計士の方と出会い、IWADO BASEが誕生した。

 

「外で過ごすのがいい、外を見ながら過ごすのがいい。焚き火をして、それでコーヒーを飲んで、波の音を延々と聞いている。そういう時間の過ごし方もあるんです」

岩戸海岸の目の前に位置するIWADO BASEからは、大きな窓から海や山が見渡せる。

「椅子も貸し出すので、コーヒー片手に海岸でのんびりするのもおすすめですよ。冬の日本海らしい少し荒い海も好きですし、夏は穏やかで、SUPを楽しむ方も結構いるんですよ」

IWADO BASEが持つもう一つの顔

「つくる時に考えたのは、自然と対話できる場所、地域に開かれた場づくりです。いろんな人がいろんな角度から入ってこられる場所になればいいなと」

IWADO BASEは単なるアウトドア施設ではない。月に1回、子ども食堂「福部らっちゃん食堂」を開催し、地域へと開かれた場所としての役割も担う。

「もともとそういう活動に興味があって。ちょうど施設を作るタイミングで、知り合いが子ども食堂をやりたい方とつないでくれたんです」

鳥取市では、各中学校区に1個地域食堂を作りたいという方針があったが、IWADO BASEがある福部地区にはまだなかった。地域もこうした取り組みに前向きで、手伝ってくれる人も多い。

「いきなりこういうことをやっても『手伝うよ』って言ってくれてご飯を提供してくれたり。とても美味しいし、すごく助けられています」

2025年度、IWADO BASEはグッドデザイン賞を受賞した。評価されたのは、単に建物のデザインだけでなく、この「地域に開かれた場づくり」だった。

 

波の音とともに、これからも

オープンから1年ちょっと。まだまだ試行錯誤の日々が続く。それでも、この場所を選んだことに後悔はない。

「もしIWADO BASEをつくる話がなかったら、早期退職せず、まだ会社員をしているかもしれない」

 

海のそばで、自分の好きなことをやる。地域の人たちとつながる。ゆっくりと時間を過ごす。

「平日にこんな時間を過ごせるっていうのは、幸せだなと思います」

 

上田さんの言葉には、移住という選択をした人だけが味わえる充実感が滲む。

岩戸海岸の波の音を聞きながら、上田さんの挑戦は続いていく。

 

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