コロナ禍を経て、キャリアやライフスタイルの多様性が広がるなか、「OFF TOKYO」や地方移住に関心をもつ方が増えています。特に豊かな自然と都市機能のバランスが取れた大分県は、東京にこだわらない新しいキャリアと生活を実現できる場所として、今注目を集めています。大分県では、リモートワークや2拠点生活、起業など多様な働き方を支援する制度も充実。東京では味わえない新しいライフスタイルの実現をサポートしています。本セッションでは、大分県出身で「東京にこだわらないキャリア」を築いている2名のゲストをお招きし、地方での働き方と暮らしの可能性について語っていただきました。本記事は、2025年3月9日に開催された「Fan!Fan!OITA 東京に縛られない、こだわらない生き方」のトークセッションの内容をレポートにしております。ファシリテーター 趙 愛子(以下、趙):皆さま、こんにちは。趙 愛子と申します。今日は「地方でもキャリアも生き方も諦めたくない東京に縛られないこだわらない生き方」というテーマでトークセッションを進めていきます。普段都内で働く皆さまが抱えるキャリアの悩みやローカルでの生き方について、ゲスト2名からさまざまな視点でお話を伺っていきたいと思います。趙 愛子 株式会社Facilo VP of HRテレビ局報道記者、外資系医療機器メーカー営業を経て、リクルートで12年従事。2021年メルカリに入社しInclusion & Diversity managerとして男女間賃金格差是正などの推進をリード。不動産テックのスタートアップFaciloにVP of HRとして参画。京都出身、鎌倉在住。2児の母。東京から離れて築くキャリア三浦孝文(以下、三浦): 高校まで大分県内で育ち、漠然と東京や関西などの都市部に出たいという思いがありました。大学は関西に行き、東京で就職しましたが、就活当時は自分がやりたいと思うような仕事に地元で出会えず、結果として東京の会社を選びました。いつかは九州に戻りたいという漠然とした思いはありましたが、戻るとしても40代くらいのイメージでした。しかし、コロナでリモート環境が進み、家庭の事情もあって30代半ばで戻ることになりました。最初は会社を辞めようと考えていましたが、理解ある会社や上司でもある取締役から、会社を辞めずにそのまま九州に戻ったらどうかと提案をもらい、現職のまま戻ることができました。三浦 孝文 株式会社ノンピ 取締役CHRO大分県別府市出身。株式会社D2C、クックパッド株式会社を経て、17年よりオイシックス・ラ・大地株式会社。人材企画室や経営企画部の責任者の後、24年2月から株式会社ノンピへ出向し現職。現在は、福岡と東京の二拠点生活。もとむろあさみ(以下、もとむろ):私が学生時代は就職氷河期だったんですね。親から「大分に戻って就職しては」と言われたのがきっかけです。福岡で5年間暮らしていましたが、休みのたびに友人を連れて大分旅行をするほど地元への愛着があったので、特に不便も感じず大分で就職しました。最初は車の営業をしましたが、望む生活と仕事のやりがいの両立が難しく、転職を重ねました。リクルートのゼクシーナビでは仕事が好きでしたが、子育てとの両立のために退職。その後、次女の食の好き嫌いの悩みをきっかけに個人事業主となり、ラジオパーソナリティなどを経て現在のコミュニティ運営に至りました。もとむろ あさみ 合同会社co-e connect 代表大分市出身。リクルート退社後、子どもの食育事業や母親・ 女性のための企画立案に携わる。 2020年4月に立ち上げたオンラインコミュニティ「ママ集まれ!」は現在九州6県展開。大分市在住。趙: 会社が手放さなかった理由について、三浦さんはどのように考えていますか?三浦:会社が私を手放さなかった理由を振り返ると、社内の人のことをよく知っていたことと、外部とのネットワークをバランスよく持っていたことが大きいと思います。30代半ばは仕事の脂がのってくる年代で、会社としても良い人材は残したいという考えがあったのでしょう。また、規模が大きくなった会社で子会社の経営に携わるポジションが出てきたタイミングだったことも良かったと思います。もとむろ: 今会社を設立してから、これまで積み重ねてきたことが全て役に立っていると感じています。何かを目指して始めたわけではなく、やりながら理想のかたちを見つけていきました。個人事業では限界を感じて組織化したように、すべての経験が今につながっています。趙:大分で起業を経験されたもとむろさんに大分県の起業環境について教えてください。もとむろ: 大分には大企業は正直あまりありませんが、都会では当たり前のスキルや知識がまだ地方に降りてきていないことがたくさんあります。そういったスキルで新しい事業を立ち上げる土壌があり、県も女性起業家支援や創業支援に力を入れています。私がママコミュニティを立ち上げた時も、1週間で200人集まったことで県の方が助成金の情報を教えてくださいました。地域をより良くしようと行政自体が努力している県だと思います。暮らしやすさと理想のワークライフバランス趙: 実際に住んでみて良かった点や課題を感じる点を教えてください。三浦: 福岡や大分の良さは、飯がうまいこと、自然と都市のバランスがいいこと、そして最近ではアジアが近く国際的な雰囲気があることです。また、子どもを連れて行ける場所も多く、東京よりもストレスが少ない環境です。一方で、福岡ではスタートアップが増えていますが、経営者の右腕となる人材やそれぞれの職種の専門家はまだ少ないと感じています。それが課題でもあり、チャンスでもあります。もとむろ: 大分は意外にも県外から来た方からは「何も足りないものはない」と言われます。ほどよく都会で程よく田舎であり、福岡にもすぐ行けるので買い物も困りません。10分車で行けば自然があり、日常的にリフレッシュできる環境です。ただ、シッターさんや料理代行の方など、生活をサポートするサービスは都会に比べると少ないです。そういった部分が整っていけば、もっと多くの方が仕事しやすくなると思います。趙: 生活コストや家族との距離感はいかがですか?三浦: 地方の生活コストは東京より大幅に安いです。駐車場代は東京の何十分の1ですし、居酒屋でも3,000〜4,000円で美味しいものが食べられます。また、実家が近いので野菜などを持ってきてもらえるのも助かります。精神的なゆとりも生まれ、九州は日が長いので子どもたちが夜遅くまで外で遊べるのも豊かさを感じます。もとむろ: 私の実家は車で30分のところにあり、夫の実家は家の斜め前です。お姑さんがすぐそばにいますが、泊まらなくても様子を伺える距離感がちょうどいいと感じています。先月も義父が骨折した時にすぐに対応できる安心感があります。趙: 移住するのに良いタイミングはありますか?三浦: 仕事と家庭それぞれのタイミングがあります。仕事面では、30代半ばで経営に携わるチャレンジができたのは、このタイミングだったからこそ。家庭面では、子どもの年齢も重要で、小学校入学前の方が動きやすいと思います。小学生から中学生までは、友達関係や教育環境を考えると移動しづらい時期かもしれません。趙: 最後に、大分の魅力を教えてください。三浦: 「大分は多様」です。歴史的に小藩がたくさんあった地域で、今でも各市町村に個性があります。県としてまとまりがないと言われることもありますが、それぞれの地域に個性があるからこそ、自分に合った場所が見つけやすいのです。もとむろ: 大分は自分が生きたい生き方を選びやすい土地だと思います。仕事だけでなく、自分の時間や家族との時間を大切にしたい方にとって両立しやすい環境です。生活コストも東京の半分程度で済むので、自分の好きなことに時間やお金を使える余裕があります。趙: お二人のお話から、キャリアの選択肢は無限であり、自分自身のキャリアを主体的に選び取っていく「キャリアオーナーシップ」の大切さを感じました。自分の価値観や強みを認識しておくことで、もとむろさんのように人やお金が集まってくる流れができ、三浦さんのように信頼関係を築いて、ご自身の望むキャリアの選択ができるのだと思います。目の前の仕事に向き合いながら自分の価値観や強みと向き合うことで、新たな道が開かれていくのかなと感じました。大分県が開催しているイベント情報、最新の移住情報はこちらも合わせてチェックしてみてください!