名駅か栄か?名古屋進出を成功に導く立地戦略~オフィス選定・開設時のリアル~

三鬼商事株式会社
名古屋支店 支店長 小池 正親
中川 奏
横部 稜文

オフィス仲介のリーディングカンパニー・三鬼商事株式会社は、2025年に設立60周年という大きな節目を迎えました。全国でオフィス市場を見つめ続けてきた同社において、名古屋支店は「製造業の聖地」という独自の進化を遂げる名古屋のオフィス変遷を最前線で見守り続けています。リニア中央新幹線の開業を見据え、支店長の小池さんは名古屋というマーケットの現状を次のように語ります。

「名古屋は非常に早い段階で出社回帰が進むなど、都市としての活力を維持しています。一方で、距離の感覚一つとっても東京の方にはなかなか理解されないような、この土地独自の文化も根強く残っています。我々が現地のリアルな感覚をお伝えします」

同社の60年の歴史の中で蓄積されたデータと、日々現場で交わされる生きた情報から、名古屋進出を成功に導くための「オフィス選定の秘訣」を紐解きます。

「出社回帰」が
全国でも早かった街・名古屋

小池 正親氏

ーー:御社は全国に拠点をお持ちですが、最近の名古屋のオフィス動向にはどのような特徴がありますか?

小池氏:全国的な傾向として、コロナ禍を経てリモートワークから出社への切り替えが進んでいますが、名古屋はそのスピードが非常に早かったと感じています。

ーー:それはなぜでしょうか?

小池氏:一番の理由は、自宅から職場までの「物理的な距離の近さ」です。東京では通勤に1時間半かけることも珍しくありませんが、名古屋の平均的な感覚は「30分」です。1時間を超えると、こちらの人にとっては「ものすごく遠い」という感覚になります。

中川氏:加えて、名古屋は製造業の街であることも大きいですね。現場(工場)が動いている以上、事務方も含めて早めにオフィスへ戻るという社内的なバランス調整が必要だった企業も多かったと思います。名駅(名古屋駅)を起点に街がコンパクトにまとまっているからこそ、出社スタイルを維持しやすかったという側面があります。

名駅・栄・伏見・丸の内、
業種や営業スタイルで決まる
主要エリアの棲み分け

※画像出典:三鬼商事株式会社

ーー:名古屋に馴染みのない方にとっては、どのエリアに拠点を構えるべきかが最初の悩みどころだと思います。主要なエリアの特長を教えていただけますか?

小池氏:まず外せないのが「名駅(めいえき)エリア」ですね。ここは圧倒的な人気を誇る、名古屋の表玄関です。

中川氏:採用の面でも、名駅は最強の拠点です。愛知県内だけでなく、岐阜や三重からも人が集まる最大のターミナルですから。求職者が「どこにオフィスがあるか」を重視する名古屋において、名駅にあるということは大きな武器になります。

横部氏:一方で「栄(さかえ)エリア」は、地元企業が多く、名古屋を代表する繁華街でもあります。名駅のビルは土日に正面玄関が閉まることが多い一方、栄は商業エリアゆえに土日も出入り可能なビルが多く、美容系や学習塾、クリニックといった「来店型」の業種には非常に強いです。

ーー:伏見(ふしみ)や丸の内エリアはどうでしょうか?

小池氏:名駅と栄の中間に位置するビジネス街ですね。地下鉄が非常に細かく通っていて、どちらのエリアにも行きやすい利便性があります。

横部氏:名駅は予算が合わない、あるいは空室がなく入れないという場合に、一駅離れた伏見や丸の内を戦略的に選ぶ企業様は多いです。利便性を確保しつつ、賃貸条件を抑えられる非常にバランスの良いエリアですよ。

空室率2.64%の衝撃!
名駅エリアの圧倒的な人気

※画像出典:三鬼商事株式会社

ーー:非常に人気の名駅エリアですが、実際の物件状況はいかがですか?

横部氏:正直、かなり厳しい状況です。名駅地区の空室率は現在2.64%(2025年12月末時点)まで下がっており、他地区に比べても圧倒的に物件が少ないのが現状です。東京の空室率が2.22%(2025年12月末時点)ですので、名駅地区だけを見れば東京に匹敵するほどの状況といえます。

小池氏:やはりリニア中央新幹線の開業を見据えて、名駅エリアに拠点を持っておきたいという企業様のニーズが非常に強いですからね。空室があっても、実際には水面下ですぐに成約していることもありますし、特にグレードの高い物件や、20〜30坪といった新規進出に手頃な区画は争奪戦です。

中川氏:最近の傾向として、郊外に自社ビルを持っていた地元企業が、建築資材の高騰で建て替えを断念し、中心部の賃貸オフィスに移ってくる動きも増えています。こうした地元の優良企業との物件争奪戦になっている点は、進出検討時に理解しておく必要がありますね。

選定基準①
徒歩5分文化と地下街直結

ーー:距離の感覚についても、名古屋特有の感覚があるとお聞きしました。

中川 奏氏

中川氏:はい。名古屋の方はとにかく歩きたがらないんです(笑)。東京の方だと駅から徒歩10分〜15分は許容範囲だと思いますが、名古屋で「15分」と言ったらまず検討リストから外されます。

小池氏:15分歩くくらいなら、もう車で動くという感覚なんですよね。ですから、採用を意識するなら駅から「徒歩5分以内」というのが、オフィス選びの絶対条件になるケースが非常に多いです。ただ、面白いのが「地下街」を通る場合ですね。

横部氏:駅から地上を歩いて5分以上かかるのは嫌がられますが、たとえ駅の改札から地下街の出口まで距離があったとしても、「地下街の出口から徒歩1分」であればOK、という感覚があるんです(笑)。名駅は地下街が非常に発達していますから、「地下街直結」の物件は圧倒的に競争力が高いです。

小池氏:地下をそこそこの距離歩いたとしても、雨に濡れず、夏も暑くない地下通路を通っていれば、名古屋の人にとっては「近い」という感覚になるんです。実は、三鬼商事が入居しているこのビルも地下街と直結しています。毎日利用していて実感するのは、やはり「地上に出ず移動できる」という付加価値は、この街では強いということですね。

中川氏:そうですね。我々自身がその利便性を知っているからこそ、お客様にも自信を持って「地下直結は、社員さんの満足度や採用力に直結する付加価値ですよ」とお伝えできるんです。

選定基準②
駐車場付きオフィス

ーー:駐車場についても、都心部とは思えないほど要望があるそうですね。

横部氏:業務内容にもよるかと思いますが、名古屋では「駐車場」がビル選びの決定打になるケースがありますね。それは通勤は地下鉄でも、営業活動には車が欠かせないという企業様が多いためです。

中川氏:実際、ビルオーナー様から「どういうスペックのビルを建てれば選ばれるか」と相談を受けた際も、我々は「とにかく駐車場を確保してください。それだけで入居募集の難易度が劇的に下がります」とアドバイスするほどです。

小池氏:営業車を1人1台持たれるような企業様だと、都心の高い駐車場代を払ってでも「拠点と同じビル内に確保できるか」を最優先されます。名駅周辺だと駐車場代は1台4万〜5万円、高いところだと7万円ほどしますが、それでも確保したいというニーズは根強いですね。社用車の台数分を確保できないことが理由で、移転候補から外れてしまうビルも少なくありません。

選定基準③
スペック以上に重視される
「パリッとしたビル」

ーー:ビルの立地や機能以外で、名古屋特有のこだわりだと感じるものはありますか?

横部 稜文氏

横部氏:私たちがよく耳にするのは、ビルが「パリッとしているか」という基準です。

ーー: パリッとしている、ですか?

横部氏:はい。名古屋独特の表現になるかもしれませんが、外観やエントランスに清潔感と高級感があり、きちんとして見えることです(笑)。名古屋では、どのビルに入居しているかが企業の信頼に直結する側面があります。特に採用の場面では、エントランスの印象一つで学生や求職者の反応が変わることもありますから。

中川氏:トイレや共用部の美しさも重要ですね。女性スタッフの方や内勤が多い方が内見に来て、水回りが綺麗だとパッと顔が明るくなるんです。外回りの多い方とは違う基準ですよね。そんな「パリッとした」しつらえが、最終的な決断を後押しすることも多いんですよ。

フリーアドレス時代の
新常識・面積計算の落とし穴

ーー:最近のオフィスレイアウトのトレンドはいかがですか?

小池氏:以前は「一人当たり3坪」といった計算が一般的でしたが、今は事情が変わっています。フリーアドレスを導入してデスクを減らしても、実は面積が以前より増えるケースが多いんです。

中川氏:Web会議用の個室ブースや、社員同士が交流できるラウンジスペースを設けるようになり、結果としてゆとりを持ったレイアウトを組む傾向にありますね。

横部氏:せっかく名駅のいいビルに入っても、すぐに手狭になって増床を余儀なくされるケースをよく見ます。最初からある程度将来の増員や多目的スペースを見越した面積設定をしておくことが、名古屋進出を成功させる秘訣かもしれません。

拠点進出の最大リスクは
「工期」と「回線」

ーー:具体的に拠点進出を検討する場合、どのくらいの期間をみれば良いでしょうか。

中川氏:とにかく「回線工事」と「内装工期」には注意してください。深刻な人手不足もあり、通信会社さんの回線引き込みだけで3ヶ月待ちということが平気で起こります。

小池氏:我々のオフィスが同じビル内で移動をした際も、回線手配だけで3ヶ月かかりました。物件が決まってから「来月オープン」というのは、今だと物理的に不可能でしょう。

横部氏:まずはレンタルオフィスで拠点を立ち上げ、半年から1年かけてじっくり本拠地を整える「二段構え」をおすすめしています。内装やネット環境にこだわりたいのであれば、最低でも半年前から逆算して動き始めるべきですね。

名古屋はビジネスと生活が
混在する魅力的な街

ーー:これから名古屋進出を検討されている方々へ、メッセージをお願いします。

中川氏:名古屋は、ビジネス街のすぐ隣に活気ある飲食店街や生活圏が広がっている、非常にバランスの良い街です。この「公私混在」の楽しさが、社員の方々のモチベーションや定着にも繋がるはずです。

横部氏:初めての進出には不安もあるかと思いますが、今回お話ししたような「名古屋特有のルール」を押さえておけば、大きな失敗は防げます。

小池氏:私たちは、単にオフィスを仲介するだけでなく、その企業の成長を支えるパートナーでありたいと考えています。名古屋という街は、一度懐に入れば非常に温かく、ビジネスを大きく育てるチャンスに満ちています。迷われているなら、ぜひ一度足を運んで、この街の熱量を感じていただきたいですね。その第一歩を、私たちが全力でサポートさせていただきます。

 

プロフィール
三鬼商事株式会社 名古屋支店
中部地域のオフィスビル・店舗・ショールーム等の仲介を行う営業拠点として1973年に開設。1991年に名古屋支店へ変更。
「オフィス仲介一筋」の精神をもって事業を展開しており、一人一人が「信念・誠実・気魂」の社訓をモットーに、真摯な気持ちのこもった営業活動を通じて、広く社会に貢献することを使命としている。

 

(取材・編集・執筆:讃岐 勇哉 / 取材日:2025年12月18日

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