
株式会社 メンバーズ 執行役員 兼 nu.Designカンパニー 社長
杉浦 英明氏
株式会社メンバーズは、名古屋に新たな拠点を開設しました。リニア中央新幹線の開通を見据え、品川からわずか40分で結ばれるこの地を、同社は将来の日本における「ターミナル(ヘソ)」になると考えています。
なぜ今、メンバーズは名古屋へ進出したのか。そして、名古屋拠点の業務の中核の一つであり、デザインと戦略を掛け合わせて、企業のDXと成長を支援する伴走支援事業を展開する専門組織「nu.Designカンパニー(ヌウデザインカンパニー)」の社長でもある杉浦英明氏が掲げる「実装まで縫い切る」という言葉には、どのような覚悟が込められているのでしょうか。その戦略的意図と、名古屋という土地に秘められた可能性をうかがいました。
名古屋を押さえるメンバーズの拠点戦略

杉浦英明氏
ーー:まずはメンバーズについて教えてください。
杉浦氏:メンバーズは、デジタル人材による伴走型支援で企業のDXを支援しています。DXの現場支援を通じて、顧客企業の「内製実行力」の向上を後押しし、組織・事業変革につなげていく考えです。さらに、デジタルの力で持続可能なビジネスモデルへの転換を実現し、脱炭素をはじめとする社会課題の解決を通じて社会変革をリードしていくことも掲げています。
弊社の特徴の一つが、高付加価値なモダン技術領域に特化した社内専門組織を持つ点です。その中で、ビジネスデザイン領域を担うのが「nu.Designカンパニー」です。
ーー:nu.Designカンパニーについて詳しく教えてください。
杉浦氏:メンバーズでは、AI、サービスデザイン・UX、プロジェクトマネジメント、プロダクト・システム開発、データ活用、マーケティング、脱炭素DXといった事業領域で事業を展開しています。
nu.Designカンパニーは、企業へ向け新規事業の創出、プロダクトデザイン、サービスデザインを提供しており、DXを推進する工程の中で上流の、企画経営や新規事業にフォーカスした支援を強みとしています。
DXが加速していく中で、体験価値が求められる領域になってくるので、そのあたりをカンパニーとして尖らせて支援していきたい、という考えです。
ーー:なぜこのタイミングで、名古屋に進出しようと思われたのでしょうか?

株式会社メンバーズ 名古屋オフィス
杉浦氏:今後リニアが開通すると、品川から名古屋まで40分で行ける距離になる、というところがあります。それから首都圏というと東京と大阪と言われますが、当社としては、両都市の中心にある名古屋という土地自体が重要なものになってくるのかな、ということを想定していました。
ーー:「名古屋が重要になる」というのは、どういう意味合いでしょうか?
杉浦氏:3年5年というスパンで見たときに、名古屋が日本の中のヘソというか、ターミナルとなる時期が来ると思っています。ですので、名古屋拠点を立ち上げた、という流れです。2023年に開設した大阪も、今回の名古屋も、当社にとっては空白地帯でした。事業が拡大していく中で、ナショナル企業がどこにあるのかを調査すると、押さえるべき都市はある程度決まってくる。そうした戦略面も含めてです。
デジタルの力で名古屋の産業を進化

ーー:名古屋の産業についてはどう考えていますか?
杉浦氏:特にモビリティ産業は、世界市場でも存在感を持っていると思います。一方で、モビリティ以外にも、部品を作っている企業、精密機器を作っている企業など、モノづくり産業として老舗企業が揃っている。そういう領域のデジタル化をさらに加速させていくのは、地域産業の進化にも関与していけるのかなと思っているので注視しています。
世界市場で戦う企業が多いこの地域だからこそ、新しいサービスやプロダクトが生まれる可能性も大きい。私たちは名古屋を拠点に、企業の挑戦をデザインの力で支えていきたいと思っています。
ーー:ご支援されている会社は、製造業が中心でしょうか?
杉浦氏:幅広くご支援させていただいていますが、モビリティ企業や製造業を中心に支援しています。あとは、EC系の企業、小売、といった企業もいますね。
ーー:名古屋本社の企業にとって、支援側が名古屋に拠点を構えることには、どんなメリットがあると捉えていますか?
杉浦氏:私自身が、名古屋に本社を置く企業に常駐していた時期がありました。その時は名古屋拠点がない状態で、私が単身で名古屋に入って、生活していたんですよね。我々の強みは「伴走支援」や「あたかも社員」という言い方をしているのですが、お客様と机を並べて仕事をするような距離感で伴走することです。やり方としては、どこでも行きますよ、というアピールもします。
ただ、名古屋に拠点を置くとなると、名古屋に一定数の人材がいること、地場に根付いた文化の中で育ってきた人たちが支援することをお客様にアピールできる。その点が既存のお客様からも好評いただいている部分はあります。
社員以上にサービスを愛し
「あたかも社員」として伴走
ーー:名古屋進出にあたって、課題や懸念はありました?
杉浦氏:率直に言うと、名古屋は、地場の会社が昔からの繋がりを持っているので、「参入がしにくい」「進出が難しい」というのは、Webなどでよく見ていました。また、名古屋企業の新規事業やDX推進で進出していく際に、名古屋の企業からすると「新規参入企業」にしか見えないため、距離をどう縮めていくのかは懸念として持っていました。
ーー:今はその懸念に直面されていますか?
杉浦氏:まだ模索している状態で、難しさに直面していない部分もあります。ただ、業種業態が違う領域で新規事業を推進していくとき、強みとして「常駐します」「デザイン思考を持ってます」「ビジネス設計思考を持ってます」という3つを掲げています。一方で企業からすると「製造業の業務理解は薄いでしょ」という障壁は持たれます。
ーー:信頼を得るためにも業界や業務の理解は重要ですよね。
杉浦氏:それを解決するためにも、伴走して支援することが大切です。お客様は事業を深く理解されているので、そこを我々が吸収し、さらに理解する。その上で、我々のデジタル技術をお客様の武器としてもらい、ワンチームで支援していく。この点も理解してもらうのが重要だと思っています。
ーー:その他に、業界や業務の深め方について工夫されていることはありますか?
杉浦氏:専門カンパニー内では、「カスタマーサクセス活動」という取り組みをしています。成果を上げるためにドメイン知識が必要で、知識を得るために最初にやることはユーザー視点に立つことだと思っています。
例えばスポーツメーカーを支援している時は、そのメーカーの洋服をまず着てみる。自動車会社を支援している時は、その会社の車に変えるということもあります。支援する企業のアプリを使って何が使いにくいのかを見る。販売店に行った時の接客を体験する。メルマガやダイレクトメールも含めて、顧客として受けられる接点は大企業ほど作られているので、積極的に体験しています。
ーー:徹底されていますね。
杉浦氏:企業のサービスに触れれば触れるほど、その企業のことが好きになります。ですので、よくメンバーに言っているのは、お客様というよりプロパー社員より社員になる、これが「あたかも社員」だと伝えています。
名古屋での現地採用と
Uターンで組織を強化
ーー:名古屋拠点は、どのエリアに構えられているのでしょうか?
杉浦氏:伏見です。選んだ理由はシンプルに、名古屋駅からすぐ行きやすいからですね。少し頑張れば歩ける距離でもありますし。
ーー:現地採用もされていると伺いました。今後も続けていく方針でしょうか?
杉浦氏:さらに強化していきたいです。実はこの2月に拡張移転しました。この拠点を活性化して、さらに入りきらなくなって別の拠点もできるぐらいにしたいと思っています。あとは、今は名古屋以外に勤務しているけど名古屋が地元だというメンバーに声をかけて、希望者に名古屋へ異動してもらうといった取り組みも行っています。
新規事業を構想で終わらせず、実装まで「縫い切る」ことに価値がある

ーー:今後名古屋で実現したいことを教えてください。
杉浦氏:nu.Designカンパニーは「ビジネス成果をデザインする」という思想があります。デザイン思考、ビジネス設計思考、伴走支援を掛け合わせて、新規事業やプロダクト開発で、構想だけで終わってしまっていた新事業を、構想で終わらせず実装まできちっと縫い切る。nu.Designという名前には、「体験を紡ぎ、デザインで縫う」という思想を込めています。
日本企業では、新規事業がPoCで止まる、稟議が通らない、実行できる人材がいない、という悩みが多いです。挑戦したいけれど二の足を踏んでいる挑戦者や、仲間が集まらない挑戦者に寄り添って、これまでにない成果を上げていきたいと思っています。
ーー:名古屋地域に向けたメッセージをお願いします。
杉浦氏:名古屋には、世界に誇れる技術や企業が数多くあります。そうした企業の挑戦とデザインの力が結びつくことで、新しい価値が生まれていくと信じています。その接点をつくる存在として、メンバーズもこの地域に貢献していきたいと思っています。
プロフィール
株式会社メンバーズ 執行役員 兼 nu.Designカンパニー 社長
杉浦 英明氏
企業のDXや新規事業開発を支援するデザイン組織を率い、サービスデザイン・プロダクトデザインを軸に企業の事業変革を支援。
企業との共創を通じて、新しいサービスやプロダクトを構想から実装まで伴走する取り組みを推進している。
現在は名古屋拠点の立ち上げを進め、地域企業との共創による新しい価値創出に取り組んでいる。
(取材‧編集‧執筆:讃岐 勇哉 / 取材日:2026年2月20日)