夢だった消防士を辞め、守ったのは直売所とぶどう。 大牟田・野口農場の物語

特別な夏の味。

そのぶどうをひと粒食べた瞬間、
口の中に広がる力強い甘み。

弾力のある果肉を包み込む
薄皮の弾ける独特の食感から、
ぶどう本来の“巨峰感”を味わえる。

この味に出会えるのは、福岡県大牟田市にある「フルーツファーム野口農場」

毎年8月、
直売所には開店前から行列ができる。

「今年も待ってたよ」

そんな声が飛び交う、ちょっと特別な夏がそこにはある。

種あり、ホルモン剤なし

“本物のぶどう”を、
家族みんなで安心して食べてほしくて。

野口農場の看板商品は「種あり巨峰」。
最近では珍しくなった“種あり”に、あえてこだわる理由がある。

「種があることで、甘みがしっかりのるんです。薄皮の弾ける食感と一緒に口の中に広がる甘みで、”巨峰感”を存分に味わえるんです。」

そう話すのは「フルーツファーム 野口農場」の3代目オーナー、野口清仁(のぐち きよひと)さん。

妊婦さんや子どもにも安心して食べてほしいから、ホルモン剤は一切使っていない。
そのぶん粒の形は不ぞろいで、見た目では不利になりがち。

「でも、味で勝負したいんです。」

「魂込めて育てたぶどうを、ちゃんと待ってくれている人に届けたい。」

ぶどうの生産には丸一年かかる。

今日も野口さんは、ぶどうの状態を確かめながら、1房1房と真剣に向き合っている。

毎年、直売所に笑顔が集まっている

毎年8月、野口農場の直売所には
全国からお客さんが訪れる。

「今年も来たよ」
「ここのぶどうがいちばん美味しい」

そんな声を聞くたびに、
野口さんの表情がやわらかくなる。

「泥臭くても、お客さんの顔が見える手渡しで販売していくことが一番自分の幸福度を高めてくれてるんです。」

顔を合わせて、声を交わして。
そこには、ネット注文では得られない“あたたかさ”がある。

「今年もありがとうございます。」と手渡される一房に、丁寧に育てられたぶどうの時間が、ぎゅっと詰まっている。

夢だった消防士

守りたかったのは、この場所だった。

そんな野口さん、実は地元で消防士として13年間働いていた。

高校時代のインターンをきっかけに、
消防士への憧れを抱き、夢を叶えた。

「でも、あるとき当時2代目オーナーとして野口農場を営んでいた父が『そろそろ辞めようかな』って言い始めたんです。」

浮かんだのは、
子どもの頃から見てきた直売所の光景。
常連さんの「今年も来たよ」「待ってたよ」の言葉。

「この場所をなくしたくない。そう思ったのが決め手でした。」

心配ゆえ、母親からの反対もあった。
でも、自分で決めた。
そして今、あの頃と変わらない声が、直売所に響いている。

感謝を込めて贈った一房が、全国へ広がった

転機は、何気なく贈ったぶどう。

母親からの反対に悩んでいたとき、ラジオ代わりに聞いていたYouTube。

「自分で決めて進んで、頑張ってる姿を見せれば、応援しない親はいない。」
耳に入った言葉に
心を動かされ決心がついた。

感謝の気持ちを込めて、
収穫したぶどうを贈った相手は、YouTuber「リベラルアーツ大学・両@学長」。

このぶどうが「忖度なしでおいしい」とYouTubeで紹介されたことで全国から注文が殺到。

「電話が鳴りっぱなしでした(笑)」

北海道から沖縄まで、
全国から問い合わせが来るようになった。
反響を受け、限られた量だが、ネット販売を始めた。

「食べたいと思ってくれる方にはできるだけ届けたい。」

野口農場のあり方も、お客さんの声と一緒に進んでいる。

みんなで育てる、大牟田とぶどうの未来

野口さんのぶどう作りは、
ひとりでは完結しない。

地元の幼稚園との取り組みで、
袋かけから収穫・販売までを体験する
「ぶどうプロジェクト」を実施。

また、地元のジェラート店「カラヘ」とのコラボで生まれた巨峰100%ジェラートは、発売すればすぐに完売するほどの人気に。

「将来は、日本一満足度の高い観光農園を大牟田につくりたい。自分ひとりじゃなく、地元の人たちと一緒に。」

そう語る姿には、地域と歩む農家としての確かなビジョンがある。

この夏、”ありのままのぶどう”に
出会ってみませんか?

スーパーでは出会えない感動が、直売所にはある。

農家の顔が見える、声が聞こえる、その場でしか味わえない温かさがある。

大牟田の「フルーツファーム野口農場」で、
この時期だけの“ありのままのぶどう“に、
ぜひ出会ってみてください。

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