本イベントは、企業の鳥取市への進出・事業展開について、中心市街地でプレーヤーとしても、サポーターとしても活動する2名をお迎えし、活動の現在地と、新しい拠点の開業による可能性を伝えることを目的として開催されました。
進出企業と同様に、街を舞台に活動する民間事業者の視点で、“鳥取市でビジネスに取り組むリアル”や、“経済性と社会性を両立させた事業を続けるヒント”をお話いただきました。その内容をお届けします。
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登壇ゲスト
(左)中川 玄洋さん|NPO法人bankup 代表理事
(右)齋藤 浩文さん|株式会社鳥取銀行 地域戦略部 調査役・株式会社まるにわ 代表取締役
鳥取の「いま」:取り組みの現在地
- 株式会社鳥取銀行(以下、鳥取銀行)
- 「支える機関として、地域へ貢献する」
- 株式会社まるにわ(以下、まるにわ)
- 「支えられる事業者として、まちの活性化に携わる」
齋藤さん:鳥取銀行は、鳥取県に本社を置く唯一の地方銀行です。所属する地域戦略部では最近、サステナビリティ経営支援(地域企業を対象に、持続可能な社会の実現に貢献する経営を支援する融資商品)を展開し、地域金融機関としての支援に取り組んでいます。
まちづくり会社・まるにわは、JR鳥取駅前の百貨店の屋上リノベーションを機に設立しました。空き家となっていた築65年ほどのビルをシェアハウスとワークプレイスとして活用することや、中心市街地活性化協議会のプロジェクトマネージャー業務として、空き家の調査や事業展開に向けた支援・ビジョンを策定するなど、鳥取駅周辺のエリアを舞台に活動しています。
まちづくりに関わる具体的なソフト事業として、鳥取市と取り組む「まちづくりワーケーションプログラム」があります。これは地元人材と都市部人材でチームを組み、地域課題に向き合う3ヶ月間のプログラムです。
2021年度からこれまでに5回開催し、テーマは一拠点を対象に遊休不動産の活用を考えるものや、エリアを舞台に企業課題の解決策・まちなか居住を提案するものまで様々です。プロジェクト終了後も、大学を休学し運営まで進めた例や、移住してこちらで就職した例など、街にも、参加者にも変化が生まれています。
- NPO法人bankup(以下、bankup)
- 「“やってみよう”の挑戦に、ゴールまで伴走する」
中川さん: bankupは、外部人材と地域を掛け算して課題解決に取り組むということを行なっているNPO組織です。“つなぐ・翻訳する・伴走する”として、今日のような、きっかけを作る場に出たり、地域を舞台に活動したい人と地域側をつないで伴走支援をしたりといったことをしています。
大学生の農業ボランティアや若者が集う場のコーディネートといった、自治体さんからの相談を受けて取り組む事業と、まるにわと一緒に空き家を多世代が集まるコミュニティスペースに活用するといった場づくりを行なっています。
他にも支援事業拡大のための子会社や、資金調達・調査のための公益財団法人を作ることにも取り組んでいますし、“対若者”に関しては全部やるぞというキャッチコピーのもと活動しています。
ビジネスのリアル
<活動のルーツ>
齋藤さん (出身:鳥取県・鳥取市)
大学・大学院は鹿児島に進学し、その時は東京で就職すると考えていました。ですが、まちづくりを勉強する中で、日本で1番人口が少ない鳥取は課題の先端だと思い、生まれた場所でもあるので、帰ろうと思いました。大学院では民間資金を活用したまちづくりを研究テーマにしたので、つまり銀行だ!と思って鳥取銀行に就職しました。
中川さん (出身:静岡県・沼津市)
高校時代に読んだ本をきっかけに砂漠緑化に興味を持ち、鳥取大学に進学しました。当時は国際協力といった道に進むと考えていましたが、興味の方向が変わったことや、街のことを真剣に考える多くの経営者に出会ったことで、自分も含めて、鳥取での活動を後輩に受け継ぎたいと思い、今の組織を立ち上げました。強い決意というよりは、面白そうだからという思いで今に至っています。
<他の地域を知っているから感じる、鳥取の魅力>
中川さん:何か新しいことを始める若者に対して「やってみたら良いんじゃない?」という大人が多いことや、人口の規模が小さいからこそつながりやすく、助けてくれる人がたくさんいることだと思います。
齋藤さん:人によってやりたいことにたどり着くフェーズは様々ですが、自分もまさに、玄洋さんに出会ったことで、それまで遠ざかっていた“まちづくり”に携わるようになりました。いろんな人を救う・助けるという玄洋さんのNPOのような団体や、企画があることが魅力の1つだと思います。

<プレーヤーとして活動する難しさ>
中川さん:やはりマーケットは小さいので、鳥取だけで事業を継続させるのは難しいと思っています。あと、昔より機会は増えていますが、困った時にスポットで助けてくれる人はいても、ノウハウを持った人を狙って採用するというのは難しかったですね。
齋藤さん:新しいことを始めたいと思ったとき、(地方は特に)人が足りていないことが課題として存在し、それによってリソースも限られているので、自分の行動を変えても難しい問題があるなと、仕事をする中で感じることがあります。
<乗り越え方・協業の可能性>
中川さん:やりたいことの実現のために、それをつないでくれる人と会うということが大切かなと思います。協業に関しては、鳥取側で足りないノウハウを育成しつつ、都市部の企業さんの力もお借りし、うまく掛け合わせて一緒に取り組むような場面を作れればなと思っています。
齋藤さん:小さい規模だからこそスピーディーに変革を起こせますし、何か新しいことを始めやすく発信できる環境なので、首都圏より大きな影響を作れるというのは協業する点でもポイントだと思います。
中川さん:“鳥取でできたから、他の地域でもできます”という事例として見せやすいので、どんどん飛び込んできて・チャレンジしてもらえればと思います。
新拠点「カトカミ」への期待
▶︎プロジェクトの背景や、目指す姿についてはこちらのレポートをご覧ください。

- 山根さん (鳥取市 企業誘致担当) 「カトカミから、爆発的なインパクトを」
カトカミは県外の企業だけでなく、地元企業や大学・金融機関・行政・学生を含む地域の皆さんにも利用いただけるように調整を進めています。多種多様な人の混ざり合いが期待できますし、それによって化学反応が起き、変化や新たな挑戦が始まることを期待しています。
- 齋藤さん 「古いOSをアップデート」
ここ5.6年、僕らも中心市街地を盛り上げようと様々な取り組みをしていますが、それでも地価が下がり続けているという現実に、OSが古かったんだなと気付きました。
カトカミの開業を機に、進出企業がN=1の事例を作ったり、内と外の企業が混ざり合うことで地元の企業が変容していったりというアップデートが起きることを期待しています。
- 中川さん 「他の拠点とは違うよね、と言われるまで」
設備や立地といったハード面の良さに甘えてしまうと、特定の人しか使わないビジネス拠点になってしまう可能性があると思っています。入居企業の活動拠点が街中に移っていくことや、“あそこに行けば誰かとつないでくれるかも・形になるかも”と認識され、外から案件が持ち込まれるような人の流動性が常に起きるところまでやり切ってほしいと思います。
カトカミ×ゼブラ企業のこれから
<入居企業のターゲットとしての、ゼブラ企業について>
山根さん:人口減少が鳥取にもたらす様々な課題は、これから全国各地でも起こりうるものです。鳥取の“コミュニティの近さ”と“課題の豊富さ”を武器に、課題解決のモデルを一緒に作って行けたらいいなと思っているので、鳥取でできれば全国展開も可能ですよと企業誘致の際にはお伝えしています。カトカミを実証モデルの場として活用してもらえたら嬉しいです。
<進出企業にとっての関わりしろ・余白について>
齋藤さん:地元の経営者は、ビジネスだけでなく暮らしという面でも町内の衰退や役割を担う人の不足といった課題に直面しています。経済性だけでなく社会性を追求した変革を行わないと地域を維持できないと実感している人が多く、ゼブラ企業としての素地があると思っているので、カトカミに進出した企業がここに合わさることで形になっていくと良いなと思っています。
中川さん:課題解決というのは分かりやすい切り口な一方、現場で活動する立場としては、マイナスから入ってしまうと進める前にモチベーションの低下を招くことがあります。実際は課題解決だとしても、入り口は“こうなったら楽しそう”や“目の前にいる人をハッピーにしたい”という観点で始められると結果としても良いという実感値があるので、そういったつなぎ方をしていきたいですし、こういったアプローチも面白いと思っています。
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