その名は「TREE(ツリー)」。

TREEは カフェ・レストラン・コワーキングスペースを複合した地域の拠点です。
地元の食材を活かした料理やクリエイターが手がけた雑貨が店内に並ぶだけでなく、イベントや地域とのコラボも実施。商店街や市内のさまざまな世代の人々をつなぐ役割を果たしています。

この場所を運営するのは、株式会社TREE 代表 中川 裕稀さん。
中川さんは、商店街の一角から地域全体に挑戦の土壌を広げるため、イベントの企画や地元店舗とのコラボなど、さまざまな活動を行っています。
「つくる」を見つめ、まちへと踏み出す

三条市で生まれ育った中川さん。
もともとは新潟市で音楽活動をしていましたが、地元の三条に戻り、ものづくり企業で働く中で地域の力を感じたといいます。
「三条って、ものを作って売るまでを全部できる人が多くて。
それを見て、自分でも音楽を“売ってみよう”と思ったんです」
その後、個人で開催した音楽イベントをきっかけに、商店街の理事長から声をかけられ、まちづくりの世界へ。
当時23歳。若者ならではの感性と行動力を活かし、商店街を舞台にした活動が始まりました。
商店街に“腹が減る市場”を

TREEの拠点があるのは、少し静かになっていた商店街の一角。
中川さんは、若い世代が再びこの通りに足を運ぶきっかけを「食」に見いだしました。

「服や雑貨は季節で変わるけれど、“お腹が減る”は毎日のこと。
まずはそこから、若い人の市場をつくろうと思いました」
現在はカフェを運営し、地元のパン屋、八百屋、お茶屋などとコラボレーション。
店内には、副業ママやクリエイターが手がける小物やアクセサリーも並びます。
“属人的”ではなく“自立するまち”へ

「TREE」という名前には、“まちが自然のように自立して育っていくように”という思いが込められています。
「自然界のように、どんどん植物が育つ環境をつくりたいんです」
TREEの取り組みの一環として開催しているイベントでは、アニメファンや原宿の商店街の方など異なる文化を持つ人をまちに呼び込むことも。
当初は戸惑いもありましたが、商店街の店主と若者の間に会話が生まれ、今では新しいつながりの形になっています。
「カオスを呼び込むことが大事。
いろんな文化が混ざることで、まちはアップデートされるんです」
挑戦を後押しするまちの力

三条で暮らす魅力を尋ねると、中川さんは少し考えて、こう答えました。
「人がいい、空気がおいしい、食べ物がうまい。
でも何より“挑戦しやすい”ことですね」
地方では、家賃や人件費などの固定費が抑えられる分、アイデアをすぐに形にして試すことができます。
さらに、「やってみれば?」と背中を押してくれる人が多く、挑戦を受け止めてくれる土壌があるのも、この地域ならではの魅力です。
三条から始まる、持続可能なまちづくりの実験

商店街から始まった挑戦は、やがて地域の未来を描く試みへ。
中川さんは、三条をモデルに“続くまちの仕組み”を探っています。
「僕のテーマは、どんなに人口が減っても豊かに暮らせるまちをつくること。
三条をモデルにして、他の地域にも広げていきたい」
現在は、石川や岡山など他県のプレイヤーとも連携しながら、
地域間でリソースを交換し合う新たなネットワークを築いています。
歯車が大きくなる場所

活動を続ける中で、中川さんが感じた“地方で働く意義”があります。
「東京でやっていたことを地方でやると、すごく喜ばれるんです。
東京だと小さな歯車だけど、地方だと自分が大きな歯車になっている感覚。
自分の力で世界を動かしたい人には、ぴったりの環境ですよ」
“移住”よりも“訪問”から

最後に、“三条に関わる入口”について聞いてみました。
「いきなり移住を決めなくていいと思います。
旅行感覚で三条に来て、カフェでコーヒーを飲んで、
まちの人と話してみてほしい。
きっと、次につながる出会いがあります。
東京から2時間。ぜひ遊びに来てください」
三条のまんなかに挑戦が生まれる“市場”をつくる
人が集まり、混ざり合い、また新しい芽が伸びていく。
その循環を支える“土壌”を育てる中川さんの挑戦は、
今日も商店街のカフェの中で静かに広がり続けています。
📹 中川さんの動画はこちらからご覧いただけます