春の陽射しが心地よい昼下がり。
日中は半袖が当たり前の季節になった。
「今日は私のイチオシの場所へご案内します。」
そう言って迎えてくれたのは、中川 倫未(なかがわ つぐみ)さん。
大牟田生まれ、大牟田育ち。
看護師として働きながら、プライベートでは大牟田のPR活動に取り組んでいる。

ついていった先は、大牟田市動物園。

入場券を買う券売機へは向かわず、入口へ真っ先に進む中川さん。
「年パス持ちなんです(笑)」
そういって、動物園の年間パスポートを見せてくれた。

動物園サポーター(年会費2,000円)になればもらえる年間パスポート。
5回行けば年パスの方がお得になる。
「動物園は大人になってから来るようになりました。夜勤明けに、のどかに過ごせる場所はないかな〜って探してて、動物に癒されに行こうって思って動物園に来るようになったんです。」
月に1回は必ず来ており、すっかり動物園の常連になった。
多いときには週3回来ていた時期もあったそう。
最近はリスザルがいるエリアがお気に入りらしい。

「大牟田って、癒される場所、アットホームな場所がたくさんあるんです。」
その言葉には、地元への深い愛情が込められていた。
「もう多分、生まれたときから大牟田愛があるんだと思います。」
仕事が休みの日には、大牟田のイベントやPR活動に参加している。
「大牟田のことを市外へ発信していきたいんです。大牟田ホットスポット情報部というワーキンググループに所属しているんですけど、大牟田の美味しいお店などのおすすめスポットを取材してSNSで発信してます。他にも、福岡県大牟田市・みやま市・熊本県荒尾市が放送エリアのラジオ局『FMたんと』で『たんとエッグ(ボランティアアシスタント)』としてラジオに出演したりしてます。」

地域での精力的な活動の背景にはどんな想いがあるのだろう。
「大牟田って、いろんな人がまちの活性化のために頑張ってるところがすごいなと思ってて。それに自分も携わりたいなって思って。微力ですけど、大牟田のために何かしたいっていう気持ちが根底にある気がします。」
実は一度は、地元を離れることも真剣に考えていたそう。
「看護師として就職するのに、これまでと違う土地で新しいことを吸収したいって思った時期もありました。東京に出ることを考えてたんです。当時は、都会への憧れも強かったし、向こうに行けば何でもあるって思ってた部分がありました。」
ただ、新卒で一人暮らしをすることや家族を残していくことに不安があった。
「都会に出て、仕事も不慣れな状態で一人で暮らしていけるのかって思った時にやっぱり不安があって。なにより、母から『大牟田に残ってほしい』って言われたことが、一番大きかったですね。なるべく家族のそばにいたいって思って。」
そうして大牟田に残ることを決意した中川さん。
大牟田への愛の変化はあったのだろうか。
「昔はネイブルランド(遊園地)や松屋(デパート)があって、子どもらしく『おでかけの日』を楽しんでたんですけど、いまは大人になって目線が変わって。大牟田には、大人が楽しめる場所があることに気づいたんですよね。」
「いろんなお店があるし、人があったかくてアットホームで。自分が疲れたときに、癒しの場所が常にあるのがやっぱり大きいな〜と思います。だから、やっぱり大牟田がいいなって思ってます。」
大牟田への愛のかたちは時間とともに変わりながら、いまの大牟田での生活を全力で楽しんでいることが伝わってくる。
「大牟田を外に発信し始めたのは、地元に残るって決意してからなんです。地域に触れるなかで、ちょっと残念なところもあるんですけどね。都会みたいに、ブランド品とか流行りのお店とかがあるわけじゃないし、ショッピングモールもものすごく広いわけじゃない(笑)。けど、そういうところも好きなんですよね。」
「歳を重ねるごとに、大牟田をまた好きになってるな〜って思います。」
歳を重ねるごとに好きになれるまち。
そんな大牟田で、中川さんイチオシの場所がもうひとつあるらしい。
大牟田市の繁華街・大正町ーー。

「ここも、大人になってから来るようになった場所のひとつです。」
お酒を飲むために大牟田市外へでることはほとんどなく、大正町で一晩を過ごせるほどお店が充実しているそう。
「お店の人たちがあったかいし、どこのお店も『これ!』っていう美味しいメニューがあるんです。ハズレのお店が本当になくて、ついつい行っちゃうんですよね。」
動物園でのゆったりとした時間、大正町でお酒を片手に会話を楽しむ時間。
中川さんの話を聞いていると、大牟田の魅力を改めて発見できる。
「大牟田の魅力をもっと市外に発信することは、これからも変わらず、一市民としてできる範囲でやっていきたいです。」
「今大牟田にいる人たちが、この先も大牟田にいてくれることを願うし、できるなら市外からもっとたくさんの人に来てもらって、大牟田を選んでもらえるといいなと思ってます。」
そんな彼女の等身大の想いが、きっと多くの人に大牟田の新たな魅力を気づかせてくれるはずだ。
疲れた時に癒される場所がある。大人が楽しめる場所がある。
そんな大牟田の魅力を、もっと多くの人に知ってもらいたい。
今度の休日は、動物園を散歩してから大正町で一杯、なんていうのはいかがだろうか。
