空き家をきっかけに笑顔つどえる街を

燕三条空き家活用プロジェクトが描く未来

新潟県三条市。東京から新幹線で約1時間50分、日本一社長の多い街と言われたこともあるほど、ものづくりの企業が多く集まる地域だ。そんな三条市で、空き家問題に向き合いながら地域の未来を描く団体がある。

それが「燕三条空き家活用プロジェクト」だ。

「やっぱり空き家っていうのはきっかけでしかなくて、この街、燕三条を気に入って、一緒に盛り上げていこうという思いが強い人、なおかつ空き家対策をやって社会問題も解決しながら地域のためになる、そういう思いがある人に来てもらいたいと思います」

そう語るのは、一般社団法人燕三条空き家活用プロジェクト(以下「空活燕三条」)理事の熊谷さん。

東京の不動産会社から地域活性化起業人制度で三条市にやってきて、今では家族ごと移住して活動を続けている。

空き家問題を多角的にアプローチ

空活燕三条の事業内容は大きく3つある。

一つ目は「空き家の流通促進」。

空き家の掘り起こしから相談、空き家バンクの運営、マッチング業務まで、空き家を次につなげていく総合的な支援を行っている。

「空き家の所有者さんが今空き家を抱えている、相続したばかり、これから相続する予定という物件をまず市や私たちの団体に寄せてもらって、それを次に買っていただく方、借りていただく方に出していく。つまり、流通に乗せてマッチングしていくのが第一ステップです」

良い状態の物件は地元不動産会社と連携して売買や賃貸につなげ、活用が困難な物件には解体を促すなど、一口に空き家といっても様々な手段で対応している。

二つ目は「空き家の利活用」。

自分たちでも空き家を活用した拠点整備を行っている。

複合交流拠点「三-Me.(ミー)」は、1階はシェアテナント・シェアキッチン、2階が移住体験のゲストハウス、3階には移住者のための住宅がある。

山間部には古民家を再生した一棟貸しの宿「Sanju~燕三条古民家の宿~」も運営している。

「空き家活用は自分たちだけでやっていても、どうにもならない。それだけでは地域も変わっていかないので、空き家活用希望者への事業支援もやっています」

空き家のプロデュースサービスも立ち上げ、空き家活用を希望する人たちの企画から運営まで伴走支援している。

三つ目は「移住・関係人口創出」。

移住コンシェルジュと連携して空き家の紹介や移住ツアーの実施を軸に、移住希望者の多様なニーズに応える体制を整えている。

前述した複合交流拠点「三-Me.(ミー)」の2階は移住体験のためのゲストハウスとして機能し、移住者がオーダーメイドの移住体験をする際の滞在拠点となる。

3階には移住者のための住宅も整備されており、移住後の住まいも確保できる仕組みだ。

さらに、三条市が進める移住促進住宅のプロデュースにも携わっている。

これらの取り組みにより、移住を検討する段階から実際の定住まで、切れ目のない支援を提供している。

空き家という地域課題の解決と移住促進を掛け合わせることで、持続可能な地域づくりを目指している。

多様なプロジェクトが生まれる土壌

空活燕三条の特徴は、メンバーそれぞれが様々なプロジェクトを持っていることだ。

学生拠点を3年越しで立ち上げた人、空き家を使った宿の運営をする人、棚貸し図書館を作ろうとしている人など、みんなが自分なりの地域課題解決に取り組んでいる。

「もちろん私たちが仕事を持ってきているものもたくさんありますが、メンバーが『学生が集える場を作りたい』『私設図書館を作りたい』と言えば、それも実現できます」

地域おこし協力隊として採用された場合も、最初は空き家相談窓口の運営を皆で一緒に行いながら、慣れてきたら自分なりのプロジェクトを持つことができる。

事業として成り立つようになれば、将来的にはスピンアウトして法人設立する可能性もある。

移住者だからこそ見える魅力

熊谷さん自身は3年前、地域活性化起業人制度で、東京の不動産会社から三条市に派遣されて、この地に来た。

当初は3年の任期終了後に東京に戻る可能性もあったが、昨年度末、会社を退職して燕三条に完全移住することを決めた。

「会社の方向性と私の考える思いが少しずれてきたということもありますが、本当に単純に燕三条が非常に魅力的で、このまま東京に戻って仕事するよりも、自分の人生としてもいいなと思ったんです」

その魅力について熊谷さんは「人の魅力、産業の魅力」を挙げる。特に地域を何とかしたいと本気で思っている人たちの熱量の高さが印象的だという。

「地域プレイヤーがたくさんいて、地域イベントや地域の歴史を本気で大人が考えてやる。そういう熱さが魅力的でした。みんな名刺というか肩書きを5個ぐらい持っているような人たちがたくさんいます」

また、移住者だからこそ見える地域の魅力もあると語る。

「移住者だからこそ分かる魅力があって『めちゃくちゃすごい、東京とか首都圏じゃ絶対ない』みたいな魅力が溢れているのに、地域の人は意外に気づけていなかったりする部分もある。外から入ってきた人間なりに『ここいいですよ!可能性ありますよね』って言えるんです」

笑顔つどえる街を目指して

空活燕三条が目指すのは「笑顔つどえる街」だ。

昨年、改めてミッション・ビジョンを整理する中で掲げた言葉だという。

「ネガティブに一見捉えられる空き家をきっかけに、人に来てもらって、今いる人も含めて笑顔が増えていくような街にしていきたい。そして若い人たちが『この街にいたいな』『この街面白いな』と思えて、たとえ一度東京に出たとしても『戻ってきたい』と思える場作り、そういった街にしていく仕事が私たちが目指したい未来です」

空き家という社会問題の解決を通じて、地域に新たな可能性を見出し、人と人がつながる場を生み出していく。

空活燕三条の挑戦は続いている。

(2025/6/12 内海藍取材)

問い合わせ・応募する
燕三条空き家活用プロジェクト
募集職種
空き家の流通促進担当
募集人数
1名
業務内容
空き家の掘り起こしから空き家バンクの運営、マッチング、相談業務まで、空き家を次につなげていく総合的な支援業務を行います。
仕事の魅力
メンバーそれぞれが様々なプロジェクトを持っており、自分なりの地域課題解決に取り組めます。
地域おこし協力隊として採用された場合も、最初は空き家相談窓口の運営を皆で一緒に行いながら、慣れてきたら自分なりのプロジェクトを持つことができます。
事業として成り立つようになれば、将来的にはスピンアウトして株式会社を設立する可能性もあります。
求める人物像
・地域や同僚、様々な人とのコミュニケーションが好き

・新しいことに挑戦し、形にしていくことにやりがいを感じる

・地方のまちづくりを行い、地域を盛り上げたい
年間休日及び勤務時間
【年間休日】
・週5日勤務※土日・祝日は休み or 祝日および週2日
・夏季休暇、忌引き休暇、生理休暇あり

【勤務時間】
9時00分~17時30分(1日7時間30分勤務、1時間の休憩あり)
雇用形態及び雇用期間
正社員(地域おこし協力隊)
※地域おこし協力隊として、3年間の任期となりますが、その後も正社員としての雇用を検討いたします
給与
月額 195,000円
※固定残業(11時間分)手当含む
※通年で勤務すると、年収280万円程度になります
待遇・福利厚生
(1)家賃・交通費・旅費補助として2万円/月の補助があります

 ※複合交流拠点「三-Me.(ミー)」(三条市神明町5-3)の3階住宅の入居も検討可能です

(2)健康保険、厚生年金、雇用保険等の社会保険に加入します

(3)事前に届出をし、許可が下りれば兼業を行うことができます

(4)活動に使用する車両や機材は当団体が貸与します。(活動以外での使用はできません)
その他
【勤務地】複合交流拠点「三-Me.(ミー)」(三条市神明町5-3)を基本とした当団体運営施設、リモートワーク可
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