採用の選択肢から事業の足場へ。TOPPANの函館拠点が担う採用と地域DX

函館市西部地区、緑の島のほど近くに、築110年を超える歴史的建造物があります。外観には当時の面影が残っている函館市の景観登録建築物。一歩中に入ると、複数のモニターに向かうエンジニアたちの姿。

ここは、TOPPAN株式会社(以下、TOPPAN)が2023年5月に開設したシステム開発拠点「ICT KŌBŌ® HAKODATE」です。DX事業を支える開発体制の強化と、多様な働き方の実現を目指して全国に展開する「ICT KŌBŌ®」の5拠点目として誕生しました。開設に合わせて函館市と包括連携協定を結び、地域課題への対応や新たな事業づくりにも取り組んでいます。

なぜTOPPANは、函館に開発拠点を開設したのでしょうか。その背景にあった人材採用の課題と、拠点を置いたことで生まれた地域との関わりや事業の広がりについて、2024年10月に東京から着任し、拠点責任者を務める浮田貴章さんに聞きました。

東京の採用競争から視点を変え、地方で人材と出会う

情報ソリューションBU コア・テクノロジー開発本部 東日本ボーダレスイノベーション部 函館サテライトオフィス チームリーダー 浮田貴章さん

――まず、TOPPANが函館を含む地方5都市に開発拠点を設けた背景から聞かせてください。

浮田さん:TOPPANでは、長野、沖縄、福岡、広島、そして函館の全国5カ所に「ICT KŌBŌ®」を設けています。いずれも、エンジニアが集まって開発に取り組む拠点です。

立ち上げの目的は、デジタル事業を担う人材の確保です。東京では採用競争が非常に激しいため、採用の視点を地方都市へ変え、UターンやIターンを希望する人の受け皿をつくろうと考えました。地方で暮らしながらキャリアを続けたい人に、働く場所の選択肢を広げる狙いもあります。

――採用先を地方へ広げるなら、地元の学生との関係づくりも重要になります。函館では、どのような取り組みをしていますか。

浮田さん:毎年夏にインターンシップを実施し、公立はこだて未来大学、函館高専(函館工業高等専門学校)、北海道大学の学生を受け入れています。函館西高等学校には出前授業も行っています。

教育機関との連携は、地域への貢献であると同時に、採用活動の一環でもあります。地元の学生にTOPPANの仕事を知ってもらう機会にもなっています。

築110年の古民家が、企業と地域をつなぐ場になった

――函館の中でも、西部地区にある歴史的な建物をオフィスに選んだのはなぜでしょう。

浮田さん:この建物は築110年を超える民家で、函館市の景観登録建築物です。外観の美しさを保ちながら、内部にもう一つ建物を入れたような構造になっています。オフィスを探すなかで、このような象徴的な建物に巡り合えたことが、ここを選ぶきっかけになりました。

――実際に働いてみて、建物や周辺環境は仕事にどんな影響を与えていますか。

浮田さん:歴史的な建物が並ぶ西部地区は雰囲気がよく、周辺もとても静かです。開発に集中しやすいですし、メンバーの通勤時間も短いです。東京のような満員電車や通勤ラッシュがないため、落ち着いて仕事に向き合えます。

観光地やベイエリアが近いので、メンバーで食事に出かけることもあります。歩いて通勤する日も気持ちがいいですね。

――仕事のしやすさだけでなく、建物そのものが地域との接点にもなっているそうですね。

浮田さん:はい。象徴的な建物なので、企業や地域の方、パートナー企業が見学に来てくださいます。そこから交流が始まり、地域の課題を一緒に考えるきっかけも生まれています。

地方拠点をコストにせず、地域課題を新たな事業につなげる

――採用の受け皿として始まった「ICT KŌBŌ®」は、会社の事業にどう貢献しているのでしょう。

浮田さん:函館拠点には、大きく3つの役割があります。TOPPANの各事業部が手がけるサービスの開発、お客さまから受託したシステムの内製開発、そして地域と連携した地域DXです。

各事業部のサービスや受託したシステムを内製で開発することで、会社としての利益創出につなげています。また、AIを活用して開発を効率化し、そこで得たノウハウを各事業へ展開する取り組みも始めています。

――本社や各事業部の開発を担うだけなら、場所はどこでもよいようにも思えます。函館に拠点を置く意味は、どこにありますか。

浮田さん:地方都市に拠点を構えると、地域の課題がぐっと身近になります。北海道では、積雪への対応や熊をはじめとする鳥獣被害、防災など、地域ならではの課題があります。そうしたテーマに日常的に触れられることも、地方拠点の価値の一つです。

――見えてきた課題を、どのように事業へつなげていくのでしょう。

浮田さん:自治体と連携しながら実証実験を行い、サービス化につなげたいと考えています。地域ならではの課題を見つけ、サービスに新たな価値を加える取り組みを、今後も強化していきたいです。

東京で1時間半だった通勤が函館では10分になった

――着任後、仕事と暮らしで最も大きく変わったことは何でしょう。

浮田さん:通勤時間ですね。東京で勤務していた頃は1時間半かかっていましたが、今は車で10分になりました。時間の流れもゆったりしていて、とても暮らしやすいと感じています。

冬の寒さや雪道の運転は最初こそ怖かったものの、今ではすっかり慣れました。

――函館で暮らしてみて、日々のなかにどんな魅力を感じていますか。

浮田さん:もともと神社仏閣が好きで、休日は古い神社やお寺を訪れ、落ち着いた時間を過ごしています。函館は北海道のなかでも歴史が古く、海や山が近いのも魅力です。

海岸沿いや、車で少し走った場所から函館山と海を一緒に眺められる風景が特に気に入っています。夏は涼しく、季節の変化をはっきり感じられるところもいいですね。

函館なら、進出時の負担を抑えながら東京との連携も保てる

――拠点の開設や運営にあたって、函館市の支援はどのように役立っていますか。

浮田さん:函館市には、企業進出に対する補助金やオフィスの賃料を対象とした助成制度があります。拠点を運営するうえで、大きな助けになっています。

参考:函館市「函館市企業立地の促進に関する条例に基づく助成制度」

――地方拠点を検討する経営者は、東京との距離や現地で得られる事業機会も気になると思います。その点で、函館をどのように見ていますか。

浮田さん:函館は、生活するうえでちょうどよい規模のまちです。東京とは飛行機と新幹線の両方で行き来できるため、離れていても連携しやすいと感じています。

「ICT KŌBŌ® HAKODATE」は、採用の選択肢を広げるために始まった拠点です。その役割は、各事業部の開発に加え、地域課題を起点としたサービスづくりへ広がっています。函館に拠点を置いたことで生まれた人や地域との接点が、次の事業を考える土台になりつつあります。

観光や一次産業をはじめ、地域ならではのテーマも豊富です。地域と一緒に課題に向き合い、新しいサービスを考える機会もあります。函館に進出を検討されている企業がいましたら、ぜひ函館で連携していければと思っています。

――ありがとうございました!

 

拠点メンバーの大原さん・佐藤さん・猿川さんの記事はこちら

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