「ローカルディレクターのひとりごと」は、実際に地域での生活を通して感じたことや出会い、取材のこぼれ話などを綴ります――。
OFF TOKYOローカルディレクターの安江成美です。
磐田で暮らし始めて約1年半。「まちを好きになる理由って、何だろう。」
そんなことを考えるきっかけになった一日がありました。

私の住む静岡県磐田市では、7月3日から5日にかけて、市内で初めてとなる「リノベーションスクール」が開催されました。
実在する空き家や空き店舗を題材に、まちの課題解決やエリアの価値向上につながる事業プランを3日間で考え、最終日にオーナーへ提案する実践型のスクールです。
以前から気になっていた取り組みだったこともあり、最終日に行われた公開プレゼンテーションを見学してきました。

取材やイベントを通して感じるのは、「このまちや地域が好きで、盛り上げたい」と思っている方がたくさんいらっしゃるということです。
今回の会場にも、「このまちをもっと面白くしたい」から行動したい。そんな熱量を持った人たちが自然と集まっていました。
建物ではなく、エリアの未来を考える
プレゼンテーションの前には、市長からの挨拶やスクールの考え方についての説明がありました。その中で特に印象に残ったのが、「空き家の再生はあくまで手段であり、目指すのはエリアの再生」「敷地に価値があるのではなく、エリアに価値がある」という言葉です。
建物そのものではなく、その場所で人がどう関わり、どんな景色をつくっていくのか。その考え方が、このスクール全体を通して大切にされているように感じました。
そして迎えた公開プレゼンテーション。
3つのユニットは、それぞれ異なる物件を舞台に、オーナーへのヒアリングや現地調査を重ねながら考えた事業プランを発表しました。
ジュビロード沿いの「中町ビル」では、オーナーと挑戦する人をつなぎ、新しいチャレンジを生み出す仕組みを提案。
プレゼンの最後に「いいわたしがあつまるまち」という言葉が出てきたときは、磐田で取材を重ねてきた一人として、これまで取材で出会ってきた方々の顔が浮かび、思わずうれしくなりました。

旧東海道沿いの「昭和ビル」では、建物だけでなく裏庭の芝生広場まで含めて人が集う場所にする提案があり、「こんな使い方があったのか」とワクワクさせられました。

そしてすでに磐田駅前のジュビロードで活動をしている「まちのための集まりロ」。
チャレンジショップの取り組みをさらに発展させ、お店をやりたい方以外への提案も。これまで積み重ねてきた活動をさらに面白くしていこうという想いが伝わってきました。
どのユニットにも共通していたのは、「空き家をどう使うか」ではなく、「この場所でどんな人の営みを生み出せるか」を真剣に考えていたことです。
各ユニットの発表後にはブラッシュアップタイムも設けられ、スクールマスターやユニットマスターからのコメントで提案がさらに磨かれていく様子も印象的でした。
建物の見え方が変わった瞬間
今回、一番心に残ったのは、プレゼンの内容だけではありません。
どの物件も、外から眺めたことはあっても、中に入ったことはありませんでした。
普段なら何気なく通り過ぎてしまう建物の中や裏側に、こんなにも可能性が詰まっていたことに驚きました。
そして、その可能性を生み出しているのは建物ではなく、このまちをもっと面白くしたいと本気で考え、行動する人たちなのだと気づきました。
まちを好きになる理由
会場には、これまで取材でお世話になった方の姿もありました。それぞれが違う立場でこのまちに関わりながら、「もっと面白くしたい」という想いを持っている。その熱量が少しずつ重なって、まちは変わっていくのだと思います。
これからまちを歩くたびに、きっと以前とは違う景色が見える気がします。通り過ぎていた建物にも、人の挑戦や未来を想像してしまう。

まちを好きになる理由は、景色や建物だけではない。
そこに暮らし、このまちをもっと良くしたいと動き続ける人たちの熱量なのかもしれない。
そんなことを思った一日でした。
(2026/7/22)