移住して、お祭りの「中の人」になる。鳥取しゃんしゃん祭で生まれた、移住者たちの新しいつながり。

新しい場所に移った先で、その土地の「中の人」になるのは、とても時間がかかることのように思えたり、その中でうまくやれるのかと不安になったり。移住を考える上で、一度はこんなことを思うのではないでしょうか。

鳥取市ではこの夏、32人の移住者が、地域の「中の人」になる一歩を踏み出しました。

夏の一大イベントに「中の人」として参加

毎年8月、鳥取市の中心市街地が傘の花で埋め尽くされる鳥取市最大の夏祭り「鳥取しゃんしゃん祭」。踊り手は3000人を超え、見物客は20万人以上にものぼる。

江戸時代から伝わる因幡の傘踊りを受け継ぐこの祭りに今年、移住者たちが初めて「連」を作って参加した。

参加したのは「鳥取ふるさとUI会」(以下、UI会)。鳥取市に移住・定住した人たちのコミュニティで、創立してから18年が経つ。今年、初めて鳥取しゃんしゃん祭に32人の連を作って本番の舞台に立った。

 

発起人の長年の思い

UI会はもともと、交流が活発なコミュニティだ。梨狩りや流しそうめんなど、年に複数回のイベントを重ねてきた。

集まるのは、年代も出身地も仕事もバラバラな人たち。鳥取出身でUターンした人もいれば、全く縁のなかった土地に飛び込んだ人もいる。

UI会としての鳥取しゃんしゃん祭参加の発起人である横山さんは、10年前にUターンしてから、ずっとこの思いを温めてきた人だ。

左:鳥取ふるさとUI会の連代表 梶谷さん|右:参加の発起人 横山さん

そんな横山さんが、2025年に移住してきた梶谷さんの活発に活動する様子を見て、声をかけたことから、今回の挑戦が動き始めた。

 

これまでと違う交流のかたち

参加を募る声をかけた時、反応があったのは意外にもIターンのメンバー。「やっぱり鳥取に来たからには一度はやっておくべきだなと思って」と語るメンバーも。

今回がこれまでのイベントと違ったのは、全員が一つの目標に向かって主体として動いたことだ。

練習は3月から始まり、多い時は月6回ほど仕事終わりに集まり、4曲分2種類のふりを覚える。足のステップから、傘を回すところ、逆に回さないところ。覚えることは、とにかく多い。ただ、途中で投げ出す人は一人もいなかった。

気づけば、メンバー同士が踊りを教えあったり、休憩中に笑いながら話したりする時間が当たり前になっていた。

「今まで単発でのイベントが多かったので、ここまで長く一緒にいると、関係性が変わってきているなと感じます」

「知ってはいるけど、あまり話したことのなかった人と交流する機会になりました」

メンバーの間で、自然と距離が縮まる空間ができていた。

「練習に関しては自分ごとじゃないとできないからかな。これまでの受け身の交流会とはみんなの関わり方が違った」

これまでの交流イベントとは違う、新しいつながりの形がそこにあった。みんなで一つの目標に向かって動くことができたからこそ生まれた関係だ。

 

鳥取の夏祭りから得たもの

本番を終えた直後、全員の顔に充実した笑顔が。

「やりきった。とにかく楽しかった。」

本番後、満面の笑みで答えてくれたのは、自身も初めての参加ながら連を引っ張ってきた梶谷さん。

発起人の横山さんはこう振り返る。

「1年目にしてこれだけできれば上出来。今年の人たちが来年の新しい人に教えて、こうやってずっとつながっていく。これはUI会の財産で、文化の始まりの年という感じがしたね。」

地元の人が当たり前にやってきたことを、やってみる。その体験が、移住者にとって「中の人になれた」と感じる瞬間の一つかもしれない。

 

入り口は、案外広い

移住した先で、どんな人と出会い、どんな形で地域の中に入っていくのか。
「地域のお祭りに参加する」ことはその方法の一つだ。同じ舞台を目指し、ともに熱くなった夏。気づけば、あっという間に関係が変わっていた。

地元の人にとっては当たり前のお祭りに参加する。傘を手に同じ踊りを覚える。鳥取市の「中の人」になる入り口は、案外広い。

 

 

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