「たばこする」。
鳥取で暮らすおばあちゃんたちが、ふと口にするこの言葉には、「一服する」「休憩する」という意味があるそうです。知らない人には少し不思議で、知るとどこかあたたかい。
そんな土地の言葉を、そっと焼き菓子に閉じ込めたのが、鳥取市の西郷地区で生まれた「鳥取方言クッキー」です。

鳥取方言クッキーのパッケージには、鳥取のおばあちゃんが使うような方言とそれに合わせたイラストが描かれています。このクッキーを作った「焼き菓子とヒトイキ huu」の坂本さんにお話を聞きました。

はじまりは、子育ての合間のヒトイキ
坂本さんは、鹿児島県出身のパティシエ。結婚を機に夫の地元、鳥取市へ移住した。移住後しばらくは、パンの売り子やカフェで働いていた。
そんな坂本さんの転機は、西郷地区の縁だった。知人から「お店にお菓子を置きたい人がいる」と教えてもらった。
以前より「またお菓子作りをしたい」と思っていた坂本さんには絶好のチャンスだった。西郷地区のカフェでお菓子を作るようになる。
その後、鳥取県が行う女性の起業支援「My Work わたしの仕事プロジェクト」をきっかけに「焼き菓子とヒトイキ huu」を立ち上げた。
店名には、食べる人に寄り添う想いが込められている。坂本さんは現在4児の母。子育てで忙しいとき、ちょっと座って「ふぅー」と一息ついて甘いものを食べる。それだけで頑張る力が湧いてきた、という自身の体験から店名が生まれた。
ちょっとした会話のきっかけになれたら
そんな食べる人へ寄り添うお菓子屋さんが新たに始めたのが、鳥取方言クッキーだ。鹿児島に暮らしていた頃から方言が書かれたグッズが好きだったという坂本さん。
「鹿児島にいたときは、いろんなところに方言のグッズがたくさんあったんです。でも鳥取ではなかなか見かけなくて。地元にお土産持って帰る時に、何か会話のきっかけになるようなグッズがあったら楽しいかなって思ったんです」
そんな坂本さんには、以前から見かけるたびに可愛いと思っていたイラストがあった。それを描いているのが、なんとママ友だと知った。地域の方に鳥取の方言を教えてもらったり、ママ友繋がりでパッケージイラストを描いてもらい、鳥取方言クッキーは誕生した。

近くの道の駅での販売もしており、お土産としても「これなんだろう」と手に取る人が増えてきているそう。
「実際に買ってくださった方もみなさん面白がってくれて。私自身もお客さんとの会話のきっかけにもなっています」
西郷地区だから生まれた鳥取方言クッキー
鳥取市河原町、特に西郷地区という場所は、工芸の郷としても知られている。陶芸やガラス細工など様々な工芸品をつくるため、県外移住者も多い。もともとよそ者が集まる場所だから、間口が広く、コンパクトでつながりが生まれやすい。

「お菓子を作りたい」という思いに地域のカフェが声をかけてくれた。ママ友との出会いからこの鳥取方言クッキーが実現した。そしてまた、鳥取方言クッキーが誰かの会話のきっかけになり、また新たなつながりをつくっていく。そんなつながりの連鎖は、西郷地区の人との距離感だからこそ生まれた。
「もっといろんなシリーズと増やしていきたいです」
西郷地区では今日も、つながりから挑戦が動き始めている。