「自分の投稿が誰かの心の支えになっているって思えたこと。それがモチベーションになって、続けてみたいと思ったんです」
静岡県磐田市を中心に、遠州地域の子育て情報をInstagramで発信しているかなさん。
元教員という経歴を活かしながら、情報発信だけでなく親子向けイベントや未就学児向け教室の運営など、地域で子育てに関わる活動をおこなっている。

情報発信だけではない、教育、子育て、そして地域とのつながり。
「子どもたちに、大人になることって楽しそうと思ってほしい」と語る、かなさんの想いに迫りました。
子どもたちとの出会いで気づいたこと
3歳からピアノを始め、ピアニストを目指して音楽一筋だったというかなさん。教員の道を選んだのは、大学時代の経験がきっかけだった。
同志たちと立ち上げた「五感学校」という活動。子どもたちの教科の芽生えの部分に、楽しさや日常との結びつきをサポートすることに焦点を当て、廃校を使ったワークショップなどを開催していた。
その活動を通して、かなさんは気づいた。もっと子どもたちの目線に立ちたい、寄り添いたい。子どもたちとの関わりにやりがいを見つけた。

その後、教員として多くの子どもたちと向き合ってきたかなさん。しかし、子どもが生まれたことで、気づいた現実があった。
ママとしての自分と教員としての自分の両立。その中で見える、仕事の忙しさが家庭に影響することへの違和感。
「苦しそうで忙しいママの姿を子どもに見せたくないと思ったんです」
そんな現実の中で、かなさんは自分に問いかけるようになった。「自分のやりたいことって何だろう」
一人のママに教えるつもりで
やりたいことを考えるなかで、自身の理想の姿を思い描いたという。子育て情報の発信はその姿に近づくための一つの手段だった。
それまでSNSに触れることがあまりなかったというかなさん。まずは、見ることからとInstagramのアカウントをつくった。
本格的な発信を始めたのは、Instagramを通じて出会った一人のママがきっかけだった。
思わずコメントしてつながったというのは、自身と境遇が似ていたから。
実際に会って話して知った、地域の子育て情報が意外と手に入りにくいというリアルな声。
「求めている人がいると思うから、まずは私に教えるつもりで発信してみたら?」と勧められたのだ。
不安もあったが、そのママの言葉が背中を押した。まずはストーリーズだけの発信をスタートした。
次第に「教えてくれてありがとう」や「投稿に残して欲しい」という声が届くようになり、ストーリーズ以外の発信にも取り組んでいった。

ママ同士のつながりをつくる
発信を続けてフォロワーが増えていく中で、SNSの発信だけでは一方通行になってしまうと感じるようになったかなさん。
五感学校のような、地域の子どもたちに寄り添える場。ママ同士が直接つながれる場をつくりたいと考え始めた。
そうして、地域でかなさんの気持ちに共感した同志と「五感学校」を開催したり、主催イベント「親子くらぶ」などのリアルなイベント企画を進めたりするようになった。

自主企画「親子くらぶ」でのお花見ピクニックの様子
「一番嬉しかったのは、私のイベントに来てくれたママ同士が
ランチに行ったよって、教えてもらうことが増えて。私を介さなくてもママたちが仲良くなったり、そういう繋がりが生まれたことが、やってよかったなって思いました」
大人のワクワクを子どもたちへ
子育て情報発信をはじめ地域での活動を行いながらも、かなさんは5歳のお子さんを育てるママでもある。
「活動するうちに、この地域には子育てや教育に想いを持った方がたくさんいるなって印象なんです。磐田にいたらなんとなくですけど、子育てしていけるって安心感がある気がします」
一方で課題も見えている。特に室内での遊び場が少ないこと。かなさんは自身の活動を通して、そうした環境づくりにも関わりたいと考えているという。
今後、かなさんが目指すのは、磐田のさまざまな大人たちが関わるイベント。
「大人たちのワクワクをちゃんと子どもたちに届けてあげたい。大人の生き方を見せることで、子どもたちも『大人になることって楽しそう』って思えるようになるんじゃないかな」
自分らしく、充実した時間を過ごせるわたし――
磐田市が掲げる『いいわたし』というメッセージ。そこには『わたし』が磐田市とのつながりで人生をもっと良いものに、充実させてほしいという意味が込められている。
「これから磐田で育っていく子どもたちの未来を、自分なりに作っていきたいと思えている自分のことが好きです。そして、地域の方と一緒に取り組めていることで、充実した時間を過ごせています」
子どもたちが憧れる大人を増やしたい。ママ同士が自然につながれる場所をつくりたい。
子どもだけではなく、大人もワクワクできる地域でありたい。
そんなかなさんの想いは、今日も一つひとつの発信やイベントを通して、磐田に広がっている。
取材を通じて感じたのは、かなさんが一貫して「つなぐ」ことを大切にしてきたということ。ピアノから教育へ、発信から対話へ。その転換の全ての中に、誰かと誰かを繋ぎたいという想いが流れている。

SNS発信から始まり、地域の人たちとともに子育てをしていく。それが、かなさんにとっての「いいわたし」を作っている。
(2026年6月16日取材)