ひとつではない鳥取市 #2 河原町(西郷地区)―移住者を巻き込む工芸の郷

 

春が来て、暖かい日も増えてきた5月。車を走らせると、徐々に視界いっぱいに深緑が広がってくる。訪れたのは、鳥取市河原町にある西郷地区。工芸の郷としても知られるこの場所には、工芸作家の移住者も多い。移住して間もないころ、そんな話を耳にしました。

 

「いい意味でのおせっかい」にホッとする

まずお会いしたのは、長谷さん・黒田さんご夫婦。カメラマンとデザイナーとして、工芸の郷のプロモーションにも携わっている。移住前は東京で暮らしていたが、自分たちらしい働き方を求めて鳥取市へ。

 

二人が暮らす事務所兼自宅は、大きな門と広い庭がある古民家。お客さんのつながりで紹介してもらった家だという。隣の家との距離もゆったりとしていて、同じ鳥取市内でも市街地のアパートで暮らす私とはまた違う、絵に描いたような田舎の暮らし。

 

 

「西郷地区の方は『いい意味でのおせっかい』をしてくれるんです。だから地域の方とつながっていくのもあっという間でした」

 

地域のつながりで仕事をもらうことも少なくないという。西郷地区に来てからまだ2年とは思えないくらい、二人はすっかり地域の中に溶け込んでいる。地域に溶け込むことは、移住者にとって大きな不安のひとつ。でも話を聞いていると、西郷にはその不安を感じさせる間もなく、人を巻き込んでしまう空気がある。

 

 

まるで親戚の集まりのような時間

お二人の家からすぐ近くにあるカフェ「えばこ GOHAN」。大阪から移住してきた今家邦雄さんと美恵子さんのご夫婦が営む。地元の野菜にこだわった美恵子さんの料理と、邦雄さんのユーモアあふれる接客で、隣のお客さんに話しかけられちゃうくらいアットホームな空間。

 

賑わう店内でお話を聞いたのが、パティシエの坂本さん。結婚を機に鳥取市へ移住し、地域の方に声をかけてもらったことをきっかけに、一度離れていたお菓子づくりを再開した。これも、「いい意味でのおせっかい」の一つ。

お店のロゴは先ほど会った、デザイナーの黒田さんが手がけたものだと聞いて、点と点がつながる。

 

「お世話になっているんです。長谷さんもよく総事(そうごと)に参加していて、夫とも繋がりがあるので」

 

鳥取では、集落の住民総出で草刈りなどの作業をすることを「総事」と呼ぶ。都会ではなかなかない文化だけど、こういう場があるからこそ、顔と名前が一致して、距離が縮まるのかもしれない。

 

話が盛り上がっていると、今家さんのお孫さんが学校から帰ってきた。坂本さんが「おかえり〜」と声をかける。知り合いの話で盛り上がり、子どもの帰りをみんなで受け入れる。まるで親戚の集まりのような時間で、思わず心がほぐれた。

 

 

おせっかいが生み出すもの

今回お会いしたみなさんは、IターンまたはUターンの移住者。工芸作家の移住者も多いこのまちで、それぞれが「やりたいこと」を持ってやってきて、お互いのスキルを知り、協力しながら実現している。

その背景にあるのは、「いい意味でのおせっかい」という風土。総事など地域の協力の中でつながり、困ったら声をかけ合う。地域×移住者、移住者×移住者。そのつながりが、西郷地区で次々と新しいものを生み出している。工芸作家だけではない、層の厚い移住者が工芸の郷を支えていることがわかった。

 

 

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